SS message その8

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続きです。甘すぎてやや恥ずかしいんですが、よろしければ、お付き合いくださいませ。エロも書いたし・・満足やわぁ・・。



暖かく包まれて深く眠った。どうしようもなく溶けてしまって全部忘れてしまいそうだった。

・・未沙・・未沙・・

呼ぶ声が聞こえる・・。

輝だわ・・。輝・・。

声に向かって両手を伸ばした。よく知っている硬い髪と、太めの首筋・・汗の匂い。

「っていうか、未沙、マジやばいよ。起きてくれよ・・」
眼を開けると、輝の顔が間近にあって軽く悲鳴を上げた。

「きゃっって・・ひどいなぁ・・抱きついてきたのはそっちだろ」
「・・あ・・ごめんなさい、起こしてくれてたのに・・」
未沙は紅くなって半身を起してベッドから足を降ろした。時計を見ると出勤時間の60分前。支度をする時間を考慮すると、確かにギリギリだった。

ホッと息をついて、起き上がろうとしている輝に振り返って言った。

「ありがと、起こしてくれて」

「うん・・」
輝は満足したように頷くと、そっと顔を寄せた。

触れるだけの軽いキス。

「あなたはまだ寝てて。もう少し時間があるわ」
「いや、もう起きてるよ。寝ちゃうと寝過ごしちゃうから。」

輝はそのまま起き上がって座った。未沙に目を向けると、彼女はベッドに腰掛けて下着を着けていた。背中に廻った手で下着のホックを留める。その繊細な指先に見入った。

初めて見る光景ではないが、少し寂しいものを見る気がしてしまう。彼女と自分だけの時間の、終わり告げる儀式のような・・。
諦めたのか、小さくため息をついて輝もごそごそと服を着始めた。

「じゃあ、行くわね。・・朝ごはん、ちゃんと作れなくてごめんなさい・・」

すっきりと白い制服を着て立ち上がった未沙は、ほんの数時間前に抱きあった彼女とは思えないほど凛として、清らかだった。

輝はベッドに腰掛けたまま彼女を見上げていたが、やがて目を伏せた。

「どうしたの・・?」
輝の様子に気がついた未沙は、部屋を出ようとしていた足を止め彼の隣に座った。
彼は割り切ったように、伏せていた瞼を上げて笑った。
「いや、なんでもないよ・・」

未沙は輝を見つめながら、ベッドに座ったままで手をついた。手に感じる硬いようで柔らかいベッドの感触は、あの溶け合う瞬間を思い出させる。
次に会えるのはいつになるのだろう・・。
未沙は輝の頬を自分の片方の掌で、そっと抱いた。
そのやわらかさに輝は目を閉じて、未沙の掌の暖かさを頬で感じた。

「ねぇ、私、この部屋に帰ってきてもいい?そうすれば、もっと会えるもの・・」
静かに頬に当てられた彼女の手を握った。
「・・そうして、くれる?あぁ、でも・・」

この宿舎棟は、男性単身者用のもので、人は良いが上品とは言えない連中ばかりだ。
輝の部屋に出入りする未沙が晒し物になってしまうかもしれない。当然、下世話な噂話のネタになるだろう・・それは、ダメだ。

「どうせなら、俺が君の部屋に行ってもいい?ここは狭いし、未沙の部屋のほうがベッドも一回り大きいし・・。落ちなくて済むだろ?」
「やだ、もう!」
未沙は少し頬を赤らめた。
「それに、女の人が使うものが何一つないし・・。ドライヤーとかもないっていうのは、不便だろ?」

それもそうだ・・。そう思って軽く返事をした。
「そうね・・。じゃあ、そうしましょ」
離れがたいけれど、任務につかなければ・・。

未沙は鞄をもって立ち上がると、また輝に声を掛けられた。
「・・あのさ、メール、見た?」
輝はめずらしく弱々しく言った。
「メール?・・あぁ、ごめんなさい。緊急連絡は他のラインから入ってきて、艦内ネットのメールは見られないの・・ここで見るわ。借りるわね」

未沙が輝の部屋にある端末から軍の艦内ネットワークにログインしようとして端末に手を触れようとした。

「あぁ!だめだめ!見てないならいいんだ。もう読まずに削除して。開いたら大変だよ、恥ずかしいのがでてくるから」

未沙の端末に触れようとする手を、輝は慌てて制した。

「やだ!まさかエッチな画像でも?もう!困った人!」
怒った顔で軽く睨んでみせた。輝は肩を震わせて笑った。

「誰もエッチな画像なんて言ってないじゃないか・・、そうそう!エッチなヤツね!見たら大変だよ、また俺に、アレをしたくなっちゃうよ」

「アレ?」
立ち上がってから未沙を軽く抱いて、耳元で囁いた。
「そう、アレ。またやって・・。」

アレと言うのは・・・。

「もーーーーーーっ!!バカっ!!知らないから!!」

耳元まで真っ赤になった顔で勢いよく輝の胸を押し、部屋を出て扉を閉めた。輝が目を丸くしていると、また扉が開いた上に、鬼の形相の未沙が再び現れた。

「着替え!ちゃんと持って来るのよ!!私の部屋が汗臭くなるでしょ!!」

再びビシャリと閉められた扉を見て、輝は小さく口角を上げた。そのままベッドに腰掛けて、軽く息をついた。しばらくそのままじっとしていたが、両手で頬を叩いて気合いを入れた。
立ち上がると、あの決戦の時に聞いた歌姫の子守唄を歌いながら、朝食の準備に取り掛かった。


あれから未沙は、全速力で自分の部屋に帰って、大急ぎでシャワーを浴びてから出勤した。
艦橋に上がる前に、未沙にあてがわれた資料置き場を兼ねた部屋に入って端末を開き、自分が居なかった時間の情報収集を手際よくし始めた。

マイペース過ぎる彼と一緒にいると、たまにこんな事態に陥るのだが、こんな事にもどこか癒されたと感じる自分に、少々呆れる。

以前なら、他人の緩みを許せるはずなどなかった。きつくこうあるべきを言い放ち、正論すぎる彼女に誰も、何も言って来なかった。

最近は、いろんな人が話しかけてくれる。自分では想像もつかなかった、面白い知恵や意見が聞けて見識が広がった。

これも、彼のおかげだろうか・・。

ふと、出かける前の輝の見せた寂しそうな顔が目に浮かんだ。

そう言えば・・・。

あの出かける間際に言った、彼のあの、おかしな言動。

メールって、何を言ってきたんだろう・・。

艦内ネットにログインして、メール受信画面を開く。
あった・・。でも、画像は添付されていなさそうだ・・。日付と時間からして、彼が倒れる前に送信されたものだ。
軽快にクリックして、画面を開いた。

・・未沙は、目を見開いて両手で口と鼻を覆った。大粒の熱い涙が次々と流れ出て彼女の手を濡らした。

立ち上がってハンカチで目元を押した。
お化粧を直さないと・・。ほんとうに、手間をやかせる人・・。
化粧直し用のちいさな鏡が、幸せそうに目の周りを紅く染めている彼女自身を映すのを見た。

閲覧していた主を無くした端末から、白い光がやわらかく漏れている。
その中に、一行だけ、文字が書かれていた。


もうひとりぼっちじゃない あなたがいるから



おわり

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2011-06-07 : SS message : コメント : 0 :
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