SS message その5




SS続きです。よろしければ、読んでやってくださいませ・・(*^_^*)



医師から「目が覚めたら帰って良し」の指示が出ていたらしくあっさりと帰る事を許され、輝は未沙が持ってきてくれた服に着替え、二人で病院を出た。

着ていたはずの艦内服は、病院に着いた時点で脱がされて、付き添っていた飛行隊のメンバーが持って帰ったらしい。

倒れ込んだ時、確かに意識はあったが、そのまま睡魔に負けてしまいそうだと思った。いい機会だから寝てしまえ!・・と思ったのがいけなかった。未沙が着替えを持ってきてくれなかったら、あのテロテロの患者用の寝衣で帰らないといけなかった・・。

「確かに、飛行隊には無理をしてもらっていると思っているのよ。でも、そろそろパイロットに休息を与えたらどうかって、提案はしているの・・」
未沙はすまなそうに話した。輝と目を合わせる事はなく、頬を赤くして俯いている。
輝の目から見て、未沙はどことなく落ち着かなく見える。髪を何回も撫でつけて整えたり耳にかけたりしている。きっと、さっきのカーテン一枚の仕切りでの(ちょっとした)行為のためか?と、男ならではの自分勝手な解釈をした。
「大丈夫だよ、ただの睡眠不足のせいだし、気にする事もないよ。自己管理がなってなかったってだけさ・・」
輝はことさらのんびりと言った。
「でも、倒れたのはあなただけじゃないのよ。もう限界がきているのよ。これは、航空団司令にちゃんと話をつけないと・・。」

真面目で律儀で優しい彼女・・。今は無理をする時でもあるのだと言い聞かせて、みんな頑張っているだけの話なのだ。身心ともに悲鳴をあげたくなるくらいの状態になっている事を、ちゃんと解ってくれている。
しかし、彼女の本来の仕事以外にまで、負担を掛けてしまうのは辛い・・。
なんとか未沙の気を逸らそうと、ことさら大げさにおどけて見せた。

「あ~怖っ!!さすが鬼の早瀬少佐!俺なんか団司令殿の前に立つだけで震えあがっちゃうのに強いね~~!」

未沙が勢いよく輝に振り返った。顔はさらに赤らんで、口元は厳しく結ばれている。ただならぬ雰囲気に輝も軽く身構えた。

「なによ!さっきから怖い怖いって!本気で心配したのよ!」
確かに先刻から、からかいすぎだと取られても仕方がないと、輝は小さく反省した。

「ごめん・・悪かったよ・・」

「それに・・」
未沙は怒りの本題に入った。まだあるのか?と、輝は気がつかない。
「それに!さっきの事・・看護師さん達、気がついてたわよ!もう~~~恥ずかしいっ!バカ!」

なんだそんなことか・・。輝はニヤニヤしたい気分を強力?な自制心でもって抑えつけた。
確かに帰る時、看護師達のニヤけた態度に、鈍感な輝でさえ感づかれたかな?と思った。しかし、また来るわけでもなし、どうでもいいか・・と、帳本人はさっぱりしたものだったのだが・・。

未沙は自分でそう言っておきながら、「言い過ぎた・・」と思っているのだろうか・・。
落ち込んだ様に瞼を伏せて、俯いている。
輝は思う。会えない間モニター越しに見ていた未沙は、冷静で無駄のない指示を出す、有能な管制官だった。顔つきは凛として、自分が近寄っていいのかとさえ思ったのに・・。こんな風に彼女自身の感情を晒している様子をみると、そして、自分にしかこんな顔を見せていないのだろうかと思うと・・・。つい先ほど、唇を合わせた時に見た彼女の顔を思い出した。今の彼女は、あの時と同じくらい可愛い・・。

「嫌な思いさせて、悪かったよ・・。でもなんかさ、可愛いよ・・。」

未沙にしたら、面と向かってそんな事を言われたら、どうしていいか・・解らなくなる・・。親からも、そして想い出の恋人からも、「可愛い」なんて言われた事はなかった。いや・・正確にはある。ただ、輝の言う「可愛い」は、他の誰が言うのとも違う・・。

いつもその言葉を囁かれる時は、耳元に唇を寄せて・・息の湿り気の熱が伝わる程に近づいて囁かれる。愛撫そのもののように感じられる・・言葉。

「あれ?固まっちゃって、どうしたの・・?」

鈍感極まりない彼。
でも、どこかそれが彼らしいと感じて、未沙は輝をチラリと垣間見た。目があった瞬間を逃さず、輝は微笑んだ。

「・・輝・・」
「何・・?」
「・・・ううん・・」
軽く首を横に振って、視線をそらした。
そして、彼の指先を小さく掴んでで、すこし早足で歩きだした。

小さい、意識していないと逃しそうになる小さな力を指先に感じて、輝は焦りに似た感覚を覚えた。
しっかり捕まえていていなと、頼りなく消えてしまうかもしれない。

寄せられる小さな力から離されないように、身をかがめて歩調を合わせた。

「未沙、未沙・・待ってくれ、もう少しゆっくり歩こう・・」
未沙は早足で歩く事をやめない。輝は未沙に掴まれた指を引き抜く事も出来ず、でも、はずみで離れてしまう事も嫌で、なんとか彼女について行こうとして歩いた。

ふいに未沙は立ち止まった。輝はホッとして、未沙に声を掛けようとした時、前を向いて輝を見ようとしない彼女のほうから、言葉を紡いだ。

「部屋に・・行ってもいい・・?」

輝は息を飲んだ。そっと振り返った未沙の睫の淵がしっとりと濡れて、この周囲を縁取るように頬は紅く染まっていた。

綺麗だった。

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2011-05-25 : SS message : コメント : 0 :
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