SS 空の旅 4 

今回は久々にマトモなSSを書いた気がします・・

続きです

良かったら覗いてくださいね(#^.^#)




輝がいくら飛行機操縦の玄人職人といっても、現代の技術を軽んじている訳ではない。アビオニクがグラスコクピットに表示してくる情報や、操縦自動最適化システムの確実さを信頼している。
要は、情報を正確に読み取って、操作を確実に行えば、細かい修正はシステムがやってくれる。離陸の時、補助翼が小さく動いているのを見る。これは操縦最適化システムの働きの一つだ。しかしこれが上手く機能するには、システムが混乱を来さないような、確実な操縦が必要と言うわけだ。

グラスコクピットには、多くのデータが相対的に表示される。輝の父親が、まだ軍隊でF-15 を操縦していた時は、コクピットに居並ぶ多くの機器から、必要な情報をピックアップして読み取る必要があった。しかし今は、アビオニクスがそれをやってくれる

OTMによるバルキリー開発の過程で発展したグラスコクピットは、民間航空機に応用されているのだ

いや・・できたら美人のオペレータのお顔も一緒に表示してもらいたいもんだけどな
と言いかけたが、機長席の後ろで急病で倒れた機長の対応をしいる未沙に聞こえたら・・と思うと・・肩をすぼめて真顔になった


「輝!機長が意識を取り戻したわ!」
操縦に集中していたから気が付かなかったが、未沙と搭乗員達がAEDを使って、機長の心拍再開に成功したようだ
しかし、意識を取り戻したとはいえ、まだ声かけに頷く程度で予断を許さない

「よし、コントロールには棺桶じゃなくてEMSを要請しておくように連絡しよう。」
「・・yes sir!」
緊急着陸が出来る空港が決まった。オンタリオ州のハミルトン空港だ
気を取り直した副操縦士のオースティンが、ハミルトン・コントロールに現状を報告し始める

「未沙」
「はい」

輝はまるで、お茶を汲んでちょうだいと言うような調子で、未沙に声をかけた

「あと24分でハミルトンに到着する。乗客と俺たちは一蓮托生だ、俺は真実を伝えておきたい」
ヘッドレストを付けて、操縦席に座る輝は前を向いたままだ。天井があって機器に囲まれた輝も、なかなか素敵だと想って、ちょっとだけ頬を染めた
そして、言葉が足りない輝の言葉を正確に搭乗員に伝えた

「乗客の皆さんには、機長が急病で緊急着陸することになったという事を伝えてほしいわ。正確に、そして乗客に落ちついて行動出来るように説明するように。非常時用のマニュアルがあるはずね。30秒以内にもう一度マニュアルを確認してちょうだい。」
緊張した面持ちでヤスダたちは未沙の言葉を聞いている
「今機長席にいる人物については、私から説明するわ。あなた方の説明が終わったらマイクを交代してちょうだい」

乗客は機長が意識を失っているなどとは、まだ知らされていなかった
機内にはベルト着用のサインがついたままだ。不安定な気流で機体はよく揺れている。
何も知らない乗客たち。
それほど機内に不安定な雰囲気は無かった。世界が安定を取り戻しているとはいえ、航空機で移動できる人は、ビジネスか、余裕がある人の旅行くらいなものだ。一般人が楽しく旅行できるまで、世界はあの地球全体を焼いた傷から回復していなかった。
事態を説明された時、客室は一瞬ざわついたが、緊急着陸の準備が整っている事、乗り継ぎの代用機がすでに準備されている事でいったん静かになった。

その中で、中年を過ぎた年齢の男性が不安そうに声をだした
「・・じゃあ、その不安定な気流の中で・・副操縦士は上手く目的地に着けるのか・・」

不安は伝播する。それも一瞬だ
その一瞬の隙間に、未沙がマイクをとった

「私は新統合軍の早瀬未沙中佐です」
その名に機内の乗客は未沙に注目した。未沙は時期移民艦の艦長として、すでに有名人だ
「今、副操縦士と一緒に操縦桿を握っているのは、新統合宇宙軍の一条大尉です。彼はマクロスに乗って、星間戦争を生き抜いた叩き上げ・・。そして、なにより彼は、飛行機の申し子です。彼に操縦を任せています。私も彼の操縦の正確さを信頼しています」

細い顎と、細い身体から突き出た張った胸。その体幹から出る堂々とした声に、乗客は圧倒され、そしてそれぞれが息をついた。もう任せるしかない

幸いにも到着予定地のハミルトン空港が近づくにつれて、気流が安定してきた。
「あの死にかけの機長はちゃんと固定できているかな?」
機長席に座る輝が、また何でもないように未沙に話しかけた。
「大丈夫よ。傷病者が出た時のマニュアル通り、CAが対応してくれているわ」
「了解。君達も着席してください」

代理の機長の指示で、乗務員も未沙も着席して着陸に備えた
ハミルトンの管制塔からは、高度、進入角度の指示が次々と伝えられ、それがグラスコクピットに表示される。輝は正確に支持にそった操縦を行った

滑走路が見える。まるでマッチの先のような大きさだ
着陸にはセンスが要る。はじめは、あのマッチの先に降りられる気がしない。しかし自転車に突然乗れる事が出来るように、突然着陸が出来るようになるのだ。とはいえ、幼い頃から父の飛行機で飛んだり降りたりを繰り返していた輝には、そんな苦労無かったのだが・・

「大きかろうが小さかろうが、同じさ」

着陸に備えて緊張した面持ちの副操縦士に、輝は無表情で言った

高度が下がっていき、そして機首の角度が精密に変わる。補助翼が細かく動く
地上には、消防車とEMSの救急車もよく見える。一気に地上の景色が確認できて、そのまま乗客を乗せた旅客機はタイヤを地上に落とす音を立てて、地上に降り立った。補助翼が最大限に開いて、スピードが落ち、機体が停止した

「代理の機長です。ハミルトン空港に着陸しました。後は乗務員の指示に従ってください」
着陸が無事完了したことを、輝は機内に伝えた
そしてヘッドレストを外すと、初めて情けない顔をして、フウッと息をついた
いたずらな笑顔を見せて副操縦士に向き直った

「お役所の調査には、ちゃんと君の正しい評価を伝えるよ・・、あ、でも、直前にビール飲んでたのは内緒だよ」

「・・輝!」

未沙が操縦室に入ってくる
「やぁ、お疲れさま」
抱き付いてきた未沙の背中を撫でながら、ちょっとだけ困った顔をした
あーでも・・この人はごまかせないな・・

二人の空の旅は、まだもう少し続きそうだ


おわり

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2017-07-30 : SS 短編 : コメント : 0 :
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