SS 空の旅 3

書きかけで放置物件に手を出しました。

続きものなので、前の記事を貼っておきますね

空の旅 1
空の旅 2

またこれ、4に続きますが、あんまり間を置かないつもりです。。





「・・早瀬少佐、一条大尉と一緒に来ていただけますか・・?」
そう二人に小さな声で囁いたのは、先ほど話をしていた客室乗務員のヤスダだ。彼女のひきつった顔に、二人は黙って席を立った。
案内されたのは、客室と操縦室の間にある乗務員の待機するスペースだ。
ありえない事に、操縦室の扉が開いている。
扉から見えているのは、明らかに気を失っている操縦者だ。向かって左側の席。機長だった。

とっさに事態を把握した輝は、そのまま副操縦席のシートに手をかけて、そこに座る男に言った。
「あんた、こういう時のマニュアルがちゃんとあるだろ?なんでそんなにビビってるんだ」
副操縦士はオースティンと名札に名前が記されていた。
オースティンは少し上ずった声で事態を話始めた。
「・・あなた方が居る事を、CAから聞きました。私が操縦室への立ち入りを許可しました・・後で処分を受ける事は覚悟しています・・」
どんな理由があっても、部外者は操縦室には立ち入り禁止だ。これほど地球が宇宙からの勢力で焼かれても、世界にはまだ自分の思想に酔い世界を狂わすテロリストがいるからだ。

「離陸が完了し、巡航にはいる手前です。機長が突然胸部の違和感を訴えて、そのまま意識を失いました・・。」
「コントロールはどんな指示を出してきているんだ・・?なぜ安定した高高度巡航を選択しないんだ?」
輝は淡々と話す。彼は凡人だが、どんな時も、いつもと変わらない。それが他の凡人と大きく違うところだ。
「上空に異常な電磁波を・・成層圏までの高度まで存在するのを感知したそうです。あなた方は軍人だから解るでしょうが、あれにつかまらないように、高度を下げて運行する指示を受けました・・」

地球が攻撃される少し前から観測されている電磁波。それに捕まってしまうと、全ての電子機器が機能を失う。電子機器の塊の航空機にとっては、それは死を意味する。

「なるほど、電磁波の存在は脅威に間違いない。しかし電磁波って状況は異常だが、電磁波じゃなくても、・・そいつが最悪な巨大積乱雲だって同じだ。原因がどうであろうと対応は変わらない。そいつに捕まらないようにするには、避けるだけだ。上を飛べないなら下に行くしかない。」
言うは易し。自動航行に慣れている民間のパイロットが、この高度での機体の維持は、不慣れというより未経験だ。1度のロスが機体を海面に落とすことになる。海面に白波が見える。白波の流れ方を見れば解る。風は追い風だ。向かい風に立ち向かって、出力を上げている時が、機体は安定するが、追い風で機体を安定させるには、高いスキルが必要だ。

グーキュ・・グーキュ・・
機長席に座る男が異常な呼吸をし始めた。呼吸停止の前触れの異常呼吸だ。
スッと唇を結んでいた未沙が、凛々しい声を上げた。
「彼の呼吸が停止する前に、一時救命をしましょう。気道が確保できるように、椅子から降ろすわ・・手伝って」
男性の客室乗務員に目線を送ってそう指示した後、未沙は輝に言った。

「あなたが機長よ。この機体のライセンスは持っているはずよ」
輝は黙って、異常呼吸を繰り返す機長から、ヘッドレストを外して自分の頭に付けた。
「了解。ヘッドレストには、以前から憧れていたので・・」
もう死にかけている人間から剥ぎ取ったヘッドレストだ。それを嬉々として頭に装着して、未沙にニッと笑ってみせた
未沙もそれに応えて微笑した
この人に任せるのなら、大丈夫だ

空いた機長の席に座った輝は、引き攣った顔の副操縦士に言った
「僕はテストパイロット時代に、この機体のライセンスを取った。なんせ、人手不足だったのでね・・」
確認するように、手元の計器類をざっと見る。
「あなたはマニュアルを順守できなかったかもしれない。けど状況をよく見ているよ。俺と早瀬少佐というリソースを知り、活用することで、乗客を守ろうとしている。
やってみせるとか頑張るとか言ってみるのは簡単だ。けど、出来ないから助けてくださいって言うのは、意外と勇気がいるもんだ。よくぞ俺を呼んでくれた。勇気があるよ・・尊敬する・・」

「・・ありがとうございます・・」
副操縦士のオースティンは拍子抜けた顔になった。何を褒められたのか解らない

輝は声を上げて言った

「俺は飛行隊の隊長とかの管理職としては平凡だ。だけど、飛行機なら誰よりも上手く飛ばすことが出来る。小さかろうが大きかろうが・・・この重くて硬い機体が、どんな風に空気に支えられているか解る。皮膚で解るんだ!自動操縦なんて、俺には必要ない」

そして、乗客130人乗務員7人の命が、1時間前まで上機嫌でビールを飲みながら空の旅を楽しんでいた男に託されたのだ

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2017-07-21 : SS 短編 : コメント : 8 :
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Re: michyさんワールドだ!
おおーそう言えば、先輩も酔っぱらって操縦してましたねー

知識というか、雑学と妄想です(´∀`)
2017-07-29 00:01 : michy URL : 編集
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2017-07-27 23:33 : : 編集
Re: No title
栗!行くぜ!
あいよ神さん、地獄の果てまでついて行きやすよ

私の中では、パパは神田鉄男

遺伝子受け継いでます

ちなみに、他の話でちょっとだけ栗原も出ているのです
2017-07-25 23:45 : michy URL : 編集
Re: No title
そうそう。輝は凡人だけど、非常時にあわてない凡人だから、結果、凡人とは言えない…と言う不思議な才能の持ち主の非凡な凡人のイメージなんです

ボチボチ書いて行きますね

お心遣い、ありがとう(´∀`)
2017-07-25 23:42 : michy URL : 編集
No title
これは父、親の遺伝のサガと捉えていいですか。( ̄▽ ̄;)
2017-07-25 17:37 : komesa URL : 編集
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2017-07-25 10:13 : : 編集
Re: No title
わーコメントありがとうございます!

私の中では輝は職人なんです
未沙は政治家っぽい感じ

でも輝は職人(^-^)
2017-07-22 23:22 : michy URL : 編集
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2017-07-22 08:50 : : 編集
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