SS  海からの風

かなりドキドキしてるんですが、久々のSSうpです。
なんと、ワタシ初のミンメイネタです。

時期はあの大戦から1年後、輝が月から帰ってきているくらいの時期です。

ドキドキするなぁ・・。第2部の輝と未沙を書く前に書いておきたかったミンメネタ。
つい最近、車で長距離移動をする機会があって、その時に浮かんだ妄想でございます・・。

あんまり明るくないですが、よろしければワタシのミンメカイフン妄想にお付き合いくださいませ(^_^;)






歌にあんなに力があるなんて・・。

そう、私の歌には何かがあるのだわ。

「ゼントラーディー艦隊との戦いを勝利させ、地球に平和を導いた歌姫 リン・ミンメイ」

そんな風に言われる事に、戸惑いなどなかった。
戦いの渦中に歌う事で、敵が動揺し味方に撃墜され、また、敵だと思っていた異星人は「私の歌」に感動し、味方になってくれた。
感謝と賞賛のの言葉を浴び、拍手の渦につつまれた。まだ心が少女のままの彼女が、今の自分を見失ってしまいそうになっていても、当然と言えた。


あの戦いから、一年。

海が見えるホテルの一室のベランダで、ミンメイは小さくメロディーを口ずさんでいた。湿った空気が喉に心地よい。

「ミンメイ・・ここにいたのか・・・」
現れたのは、長い髪と強い瞳の男。リンカイフンだった。二人は夏のツアーを終えて、新しく建てられたリゾートホテルで優雅に休暇を楽しんでいたのだ。

「ええ・・ここはとても素敵な場所ね!」
振り返ったミンメイは、両手を広げて大きな伸びをして、リラックスした明るい笑顔を彼に見せた。そして今度は肩をすぼめて、ほんの少し、いたずらな笑顔をうかべて言った。
「でも、大丈夫?」
「何が?」
ベランダに寄り掛かったミンメイの隣に、ピッタリと寄り添って腰に手を廻したカイフンが、彼女の瞳を見つめながら言った。

「だって、このホテルお部屋、高そうなお部屋じゃない。今回のツアーは色々と凝った事をして、コストがかかっているのでしょ。でも、お客様の入りが・・」
笑顔が消えかかったミンメイに、カイフンは優しく、そして揺らぐことなく静かに言った。
「君が心配する事じゃないよ。だって、君はリン・ミンメイなんだ。」
安心したように、ミンメイは肩の力を抜いてから、ベランダに寄り掛かって外の景色を眺めた。カイフンも、同じように躰の向きを変えて、外を眺めた。

沈黙の後、ミンメイは大きく息を吸いこむ。夕暮れ時、夕日で紅く染まった海と、海からの風が彼女から歌を引き出した。

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.

ゴスペルの讃美歌の名曲「アメージング・グレース」の一節をゆっくりと歌ってみた。
しかしその仕上がりは、彼女を納得させるものではなかった。

一瞬考えたあと、思いついたとばかりに両手をパンと叩いて、彼女は明るく言った。
「そうよ!私、レッスンがいいかげんな状態でデビューしたでしょ。だから、もう一度ボイストレーニングを受けたいの!そうすれば・・」
「お客の入りが悪いのは、軍が新型兵器開発にうつつを抜かして、民間に金を流さないためだ。君の歌声は超一流だ。俺が保証する」
真顔で強く言い放つ彼にのまれて、彼女は口をつぐんだ。
「資金の事は心配するな。一年前のあの戦いで歌った時、軍からせしめてやったギャラがたくさん残っている」
明るい表情を見せたカイフンが、カーラーで巻かれていないミンメイの長い髪をそっと撫でた。

海風が、静かに、そしてしっかりと二人の間に流れた。心地良いようだけど、長くこの場所に立っていたら、ちょっとした疲れを生じさせてしまうような、強い湿度と潮を含んだ風だった。
ミンメイはベランダの柵をピアノの鍵盤に見立てて指で叩いた。

・・ぼくは もう 追いかけはしない・・

短いメロディーを口ずさみ、そしてもう一度彼に向かい合った。
「キーボードも本格的に練習したいわ」
「必要ないさ。君には俺が選んだ一流のバンドマンがついているんだから・・。さぁ、もう中に入ろう。これ以上風に吹かれていれば、風邪をひきそうだ・・」
カイフンに促されるまま、ミンメイは海からの風に背を向けた。

豪華なディナーを当然のように食べ終えると、二人はそのままもつれ合ってベッドに倒れ込んだ。
まだ少女から女の間に立ったばかりのミンメイにとって、彼の強引さは「怖い」とさえ感じた。しかしその数を重ねると、強引さも心地よいものとなり、そのうち小さな駆け引きさえも覚えるようになった。

ああ、なんて魅力的なんだ・・。まだ従兄で良かった・・。兄妹だったら・・背徳の極みだ・・。

甘い言葉は、彼女のなかで優越感に変わる。小さく唇を吊り上げると、今度は彼女のほうから彼にキスをした。

俺の夢は・・・君が大観衆の中で歌う事・・。そう、異星人、地球人で、いっぱいになった・・大きな音楽ホールで・・。

囁く彼の声は、大観衆の中でスポットライトを浴びる自分を想像させた。

あなたの夢は・・私の夢ね・・・

彼が呻き、彼女が振るえた。そしてその後は、必ず深い眠りが待っていた。



きっと、夢よね・・こんな所に立っているなんて・・

ミンメイはあのベランダの上に立っている。風が、彼女の全身を洗い流すように吹いていた。
彼女は歌い始める。それは、まだ知らない歌だ。
けど、彼女の魂は、もうその歌を知っている。

歌い始めると、風に躰が乗せられてふんわりと、ベランダの柵から浮かび上がった。
海からの風に乗って、ミンメイは歌う。
歌えば、大地も、海も、星も、宇宙もきらめいて、キラキラと小さな光の粒をたくさん放った。それは命そのもののように思われた。

歌えば歌うほど、光の粒は輝き、大地も、海も、宇宙も光を放った。
もう肉体さえ感じない。歌そのものになったミンメイが、全てを祝福するように歌い続けた。



眼を覚ますと、すぐそばに彼の首筋と鎖骨が見えた。

・・すごい夢・・みちゃった・・。

ミンメイは躰を起こして、そばで眠るカイフンにそっと口づけをすると、またあの夢に出てきたベランダにでた。
もうすぐ朝になる。
沈みつつある月が水平線に近づき、美しい銀の光の帯を、海の表面に描いていた。

どうしてあんな夢・・みたんだろう・・。

そして、あの時、誰かに呼ばれたような・・。

「・・輝、元気かな・・」
月が沈むのを眺めながら、彼女はそんな事を思った。

確か、月から帰ってきて、そのままナントカの研修を受けるとか、言っていたけど・・。
何かの研修を受けると確かに聞いたのだけど、彼女には思い出す事が出来なかった。

海からの風がレースのカーテンを揺らす。
月が沈めば朝になってしまう。その前に、もう一度ぐっすり眠りたい・・。

そう思った彼女は、また彼が眠る広いベッドに戻って行った。



おわり

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2013-07-31 : 空白の2年間 : コメント : 8 :
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Re: タイトルなし
バボさん、コメントありがとうございます。
こんな感じでチョイ暗めに書いちゃったけどそんなふうに言っていただけると嬉しいですわん(^o^)
2013-08-22 14:25 : michy URL : 編集
う~ん 今回のSSって
すっごく 心理描写がすごい!
セリフの裏にある真意と求める
モノ の違いが魅力的です
2013-08-14 23:19 : 敦賀屋 バボ URL : 編集
Re: No title
myさん
そうそう、寝起きを共にってヤツですよ(^_^;)カイフンとミンメイのナニってのはどんなもんか・・?と思ったけど、そりゃそうでしょーーーと思って。でも、周りからバレバレで、ちょっと前のSSに書いた登場人物のセリフで「アイドルとしては、あのマネージャーとの仲が生々しいし、シンガーとしては中途半端」ってのを表現したかったんですよね~~。
ヒカミサ大人風味、書きたいです!!そうなると、やっぱり劇場版が書きやすいかなぁ・・。
2013-08-13 22:46 : michy URL : 編集
Re: No title
ゆばさん
コメントありがとう~~!ミンメイのSSなんて書く日がくるとは思ってもみなかったけど、なんかふと浮かんじゃって。可愛くて周りから愛されるのが当たり前なミンメイの、これからくる転落の手前・・的な感じとか、パートナーと生きる事以外で母性やら女神的要素を発揮する女性的な感じとかが書けるといいなぁと思った訳ですよん。ううっ楽しんでいただけたようで、良かったです(*^_^*)
カイフンセリフ、ワタシも再生容易でした(^o^)
2013-08-13 22:40 : michy URL : 編集
Re: グッときます
ぱよぷーさん
お返事遅くなってごめんなさいね(^_^;)
ややっ・・そんな風に言っていただけると嬉しいです。崩壊前の薄氷の上の幸せ・・。テレビ版のこの二人って調子良い時と悪い時があるから、その境目みたいなのが書けて楽しかったっすよ。

2013-08-13 22:34 : michy URL : 編集
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2013-08-09 19:16 : : 編集
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2013-08-09 11:47 : : 編集
グッときます
こういう薄氷の上のドラマ、ゾクゾクします。
いずれ来る崩壊、そして再生が分かっているからっていうのもあるんですが、暗めのお話サイコーっす。ハイ。
ミンメイはこういう話も似合いますよね。サクセスストーリーの一環にもなるし。
またカイフンの馬鹿っぷりが、いかにも奴らしくて笑えました。
気分は10拍手!次作も楽しみでーす!
2013-08-02 16:29 : ぱよぷー URL : 編集
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