SS  どこよりも 青い場所 6

更新止まる宣言から少ししか経ってませんが、書けたのであげちゃいます(^_^;)
休んでいる間にも、コメントやたくさんの拍手をありがとうございました

SSネタですが、航空機とか管制に関してはほぼデタラメなんですが、そのあたりはご容赦くださいね。

ではでは、また籠りますが、気が向いたら覗いてみてくださいね(*^_^*)
どこよりも 青い場所 1~5は「空白の2年間」ってカテゴリに入っております^_^;


なんだか今日はざわついている。

輝がテストパイロットとして所属している航空基地は、いつもと違う雰囲気を見せていた。

・・当局の監査より厳しいって・・評判だからな。

どことなく緊張する同僚たちを見て、輝はニンマリと笑った。
今日やってくる視察団に、あの「鬼より怖い早瀬少佐」がいるためだった。

未沙が視察で基地にやってくる話は、彼女はいつものように輝の宿舎を掃除しに来てくれた時に話してくれた。
VF-4の開発は、ガウォークタイプ、バトロイドタイプはかなり進んで、もう第6フェーズと言われる運行マニュアル作成の段階をクリアしそうなのに、輝がたずさわっているファイター形態は、第5フェーズに入ったばかりで、目に見えて遅れてしまっている。
その事を追求されるのかな・・と思った時、未沙は俯きながら微笑してポツリと言った。

「・・なんだかね、楽しみなの」

もうこれは男を見せるしかないではないか。苦手なプレゼンはあの新中州重工の若手開発者バース氏がやる事だし、自分はVF-4の模擬飛行をやってのけてみせようではないか!


そんな休日を思い出してにやけた顔を修正していると、バースが輝の背中を挨拶めいてポンと叩いた。

「一条大尉、ちょっと怪奇現象があったんですが・・」
いつもにやけ顔のバースが、さらにニヤニヤいる。
「うちのスケベ上司が言ってました。地下のトイレに入ったら・・突然照明が消えたらしいですよ」
「あぁ、そんな事は施設課にいってくれよ」
さっさと背中を見せて、輝はまたにやりと笑った。


視察団への模擬飛行は午後から予定されている。
昼休憩を告げるサイレンの後、輝は軽く昼食を摂ってから、格納庫に向かった。
格納庫には、午後から操縦する予定のVF-4が鎮座していた。

なんて、きれいなんだろう・・。

VF-4ライトニングを見上げて、輝は思った。
この美しい機体が戦闘に使われない事を、改めて祈る心境になった。・・そうあって欲しい。

「・・輝」
だれも居ないはずの格納庫の中で、聞き慣れた呼び声が耳に入ってきた。
「未・・早瀬少佐。なぜここに?」

未沙はにっこりと笑って輝の横に立ち、VF-4 を見上げながら言った。
「バースさんがね、教えてくれたの。あなたがここにいるって」
「・・あぁ、そっか」

「きれいね・・」

「・・うん」

「戦闘に使われなかったら・・いいのにね」

「そうだね・・」

格納庫の大きく開いた扉から、穏やかな春の日差しが心地良い風をつれてくる。
その風が彼女の髪を揺らす気配を、輝は感じていた。



午後からは(輝にとっては)本番の模擬飛行が始まった。バースから指名された輝はVF-4のコクピットにきっちりと収まって、ラストチャンスエリアで機体の最終チェックを終えた。

今日はかなり風が強い。
視察団の一員の彼女も当然どこかで見ているはずだが、今はそれを考えている余裕はない。
コントロールタワーの指示を受けて、輝は滑走路に進入すべくスロットルレバーを押した。


その時未沙は、コントロールタワーにいた。マクロスの主任航空管制官だった事もあり、この場所での視察を勧められたのだ。近くにはあのバースもいる。

未沙の胸には、今まで感じた事がなかった重いものがつかえていた。
不安というか、心配と言うか・・。

きっと、輝が飛ぶのを見るのが、久しぶりだからだわ。
そう言い聞かせてその胸の重いものを拭い去ろうとしていたのだが・・。
その予感がこれ程早くに現実になるものとは。

輝が操縦するVF-4は離陸して前輪後輪が機体に畳み込まれてすぐに、不穏な動きをした。左右に大きく翼を振って、まるで下手なアクロバット飛行にも見えた。
バースが慌ててマイクを握ろうとした時、輝から「非常事態発生」の知らせが入った。

「エマージェンシー! エマージェンシー! 機体が制御できない。バックアップシステムに切り替えるが変化なし。手動制御に切り替えて航行中。航路変更が少なく済んで降りられる空港を探してくれ」

やや上ずった輝の声に未沙の指先も一気に冷たくなった。
下敷きが空を飛ぶが如く不安定な機体だ。それを制御している、コンピューターシステムが機能しなくなっている。この強風のなか、手動で機体を制御する事など神業のようなものだ。

担当管制官が慌てて返答した内容は最悪なものだった。
「航路変更が最少の空港は現在、民航のトラブルで閉鎖中です!!」
「一条大尉!バースです!高度が確保できたら脱出してください・・機体は諦めますから!」
「・・なんだと?!」
輝の緊張した声がコントロールタワーに響き、その場の空気が凍る。

「お願い、輝!無理しないで!」
「えっ未沙、そこに居るの?・・でも、そこにいるなら、君らしくない・・言動だな」
「だって・・!」
未沙が震える両手で口元を覆った時、輝はマイクに響くほどの大きな深呼吸をした。

「じゃあ元の場所に降りるさ。テストパイロットの役目は、どんな状況でもデータを持って帰る事だろ?不具合の原因をつきとめないと・・・未沙!」
打って変わって冷静に話しだした輝に突然名前を呼ばれて、未沙は息を飲んだ。
「未沙、そこに降りる。周囲500kmの気流の状況を教えてくれ」
「わ、解ったわ。ごめんなさい、変わってちょうだい」

未沙は、担当管制官からヘッドレストを奪い取るようにして席に着くと、他の航空機の整理やグランドクルーへの矢継ぎ早に指示をした。

「輝、気流が安定していると思われる空域を知らせるわ」
「了解・・」
「大丈夫、ちゃんと見ているわ・・」

「一条大尉!!その辺りでは・・」
バースが声を上げた時、未沙が片手を出してそれを制した。
「バースさん、今彼に話しかけないでください。とても精密な操作を行っているところです。必要な事はタイミングをみて私が知らせます」

・・すごいな、解るんだ。

二人のやり取りを無線で聞いていた輝は小さく笑った。

気流の悪い中で旋回し、なんとか着陸体勢に入ろうとしていた。
「輝、私が出来るのはここまでよ・・気を付けて!」
「ありがとう、未沙!」

小さく、本当に小さく滑走路が見えだした。
ただでさえ減速すると不安定になる機体なのに、コンピューター制御が効かなくなったVF-4はさらに不安定な動きをする。一つ修正すればもう一つ修正が必要になった。
着陸体制に入ってしまえば、もう機体と運命を共にするしかない。たとえ脱出出来てパラシュートが開いたとしても、降下するスピードの減速が間に合わなければ、地上に叩き付けられて命を落とす事になる。
全神経を操縦に集中させながら、輝は下がっていく高度を読み始めた。

「・・1000、・・800、・・500、・・」

その声を聴く未沙たちの表情も硬く凍る。

「・・200、・・墜ちない、・・墜ちない、・・停まれっ!!!」

ようやく車輪が滑走路に着いた。しかし、うまく減速できなければ、航空機はまた飛び上がってしまう。
「停まれっ・・・・・!」
風を切る鋭い音を響かせながら、輝は最大限のブレーキをかけた。
機体は滑走路の端近くまで進んで、ようやくその動きを止めた。

「はぁ・・・・・・」

風防を開けると、何事も無かったかのような春の日差しだった。ヘルメットを外すと、汗で濡れた髪と顔を、風が心地よく撫でていく。

グランドクルーが一斉に向かってくるのが見えた。輝はもう一度シートに埋もれて、空を見あげた。
暗い宇宙でも、底知れない青さの大気圏の果てでも、いつも、彼女の声が頼りだった。

そして、今回も・・。

「大尉!勲章ものです!!」
コクピットに梯子をかけた整備員が、興奮気味に言うのを聞いて、輝は我に帰った。

機体から降りてさっそく後の処理に取り掛かろうとした時、ジープのエンジン音と共にバースの声がひびき渡った。
「一条大尉!!無事帰還のプレゼントですよ!」

振り返ると、透けるような光に包まれた、白い制服と亜麻色の髪をなびかせた未沙が、バースの運転するジープから飛び降りて駆け寄ってきているのを見た。

「未沙!」
ぶつかるようにして抱き合った二人には、冷やかしの口笛も聞こえやしない。

長い髪に埋めた顔を離して、見上げる濡れた瞳に輝はいつものように飄々と言った。
「ねぇ、今度の休日、空いてる?」



おわり

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2013-05-03 : 空白の2年間 : コメント : 4 :
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Re: 解るんだ!
くまおさん、コメントありがとうございました。
ずっと前から妄想してたんで、なんとか形にできてよかったなぁと思ってます。
卓越したパイロットの輝と、特筆した管制能力を持つ未沙・・ありがとうございます。
そんな感じに見えたらいいなぁけど知識ないよと思いつつ書いたんですが、まぁいいか知らないなりに書けば!と開き直った結果です(^_^;)
2013-05-10 00:18 : michy URL : 編集
解るんだ!
 卓越したパイロットである輝と特筆した管制能力を持った未沙の信頼という名のタッグ、ご馳走様でした。
 くまおも冷やかしの口笛と爆竹を鳴らしましょう(笑)

 もはや公認のカップルですな。
2013-05-07 12:44 : くまお URL : 編集
Re: ドキドキもの
ぱよぷーさん
コメントありがとうございました。
いやいや、一応このSSシリーズは終わりのつもりで・・(^_^;)解りにくかったですね。
ぱよぷーさんみたいに脈々と続けて書ける方が羨ましいです(*^_^*)
2013-05-05 23:44 : michy URL : 編集
ドキドキもの
大丈夫と分かっていても、ドキドキしましたよ。
カッコいいじゃないですか、輝~。
も、公認ですよねコレってば。

続き楽しみに、また来ます~。
2013-05-03 21:49 : ぱよぷー URL : 編集
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