SS どこよりも青い場所 1

ちょっと久々に続き物になりそうな予感・・。

空白の2年間、輝テストパイロット妄想です。やや需要低めな印象もしますが・・(^_^;)
設定や航空機に関して間違っていても無視してくださいな。

続きとはいえ、いつ続きが書けるのかは未定。でも、最後まで書きたいです。

ではでは、こんな感じですが、よろしければお付き合いくださいませ^_^;



月のアポロ基地での任務が終了し、無事地球に帰ってきてから1週間。
一条輝は「航空団司令付」という、なんとも窓際を感じさせる役職名がついていた。
それでも面子にこだわらない性格が幸いし、周りが心配するほどのんびりと任務をこなしていた。
そして今日の任務は、航空団司令の(パイロット資格維持のために必要な飛行時間を稼ぐための・・)訓練飛行に同行していた。

複座のバルキリーの前席に航空団司令のタナカ、後席に輝が乗り込んでいた。
バルキリーに装備されている、多くのシステムのおかげで昔のように、後席が真剣にナビゲーションをする時代ではない。今回はロートルに現役が付き添っているという説明がふさわしい。

「タナカ司令殿、前方に積乱雲がありますが、どーしますか、突っ込みますか?」
ウマが合う上官との、こんな訓練飛行は気が楽だ。輝はからかうように前席のタナカに言った。
「そんな事をするバカはお前くらいだ。それと、もう大気圏の感覚は戻って来たか?」
「そうですね、そろそろ大丈夫です」
「例の彼女とも感覚は戻ったか?」
「はぁ?聞こえませんが・・」

月から帰ってすぐ、未沙が食事を作って帰還を祝ってくれた。しかし、その時にかかってきたミンメイからの電話がきっかけで、早々にケンカしてしまった。
なんとかしたいが、大仰に「仲直りのためにまた逢う」というのも変か・・。などと考えてしまう。

でも、このまま逢わないと思うと、それも寂しい・・。

なにか、きっかけがあればいいのだけど。



「おい、帰ったら話がある。ブリーフィングが終わったら、そのまま俺に部屋に来い」
「了解」
どうせ、これか配属される飛行隊についての話だろう。そう思って軽く返事をした。

タナカは輝の返事を聞いて操縦桿を引いた。高度が上がると、みるみると空は海より青くなった。
単座のバルキリーでは、この偉大過ぎる自然のなかでたった一人になる。絶対的な孤独の中で、判断し、見定め、決意する。
そんな時に、モニターに映る彼女にホッとしている自分に気が付いたのは、いつ頃だったのだろうか。

・・まぁ今回はおっさんと一緒だけど・・
そう思って、ほんのりとモニター画面に彼女が映る事を期待した。

輝が着陸体勢に入る事をコントロールタワーに連絡すると、童顔な顔ときっちり切りそろえた前髪が目に入った。今日はシャミーが指示をだすようだ。

「おい、今日はお前の美人さんは休みか?」
からかう声を無視する事しか思いつかなかった。


ブリーフィングが終った後、タナカから言われた今後についての内示は意外なものだった。
―テストパイロット養成コースの学生にならないか。
その思いもつかなかった命令に、輝は心臓が鳴るように打っている事を感じていた。

テストパイロットはパイロットが片手間に出来るものではない。
飛行機野郎が勇気と狂気を充満させて、未知の世界に挑んだのは、もう大昔の話だ。
現代のテストパイロットの役目は、技術者が求めるデータを淡々と収集する事。
あらゆる条件の中で、40度で旋回と言われれば40度で。39度でも41度でもデータとして使えない。
その実験飛行の中で得た知見を、技術者が解るように伝える。
「ぎゅっと押したら、ふぅと滑るんです」では技術者は何が起こったのか解らない。
テストパイロットは、エビデンス(根拠)で語る技術者と、職人気質な操縦者の間をつなぐ、特殊な役わりと言える。

「・・自分は適任じゃないと思います。俺にデータ取りが出来る訳ないですよ!」
「お前が月にいた時書いてきたレポートがあるだろう。あれを読んで思ったんだが、お前のような考え方をするやつは、テストパイロットに向いているんだ。どうだ、挑戦してみたらどうだ?」

「無理だと思います」
そう言って憮然とする輝に、タナカもムッとした表情で言い放った。
「ああ、俺も無理だと思うさ。けど今は人手不足だ。信頼できるジーナス少尉は、嫁の世話をしてもらわんといかんしな」

自分に出来ない事も、マックスなら出来る。

輝は、息がグッと詰まるのを感じた。

それは、マックスが部下の時からなんとなく感じていた、ある感情だった。
突然のトランスフォーメーションで、未沙とマクロスの街の一角に閉じ込められた時、「彼は天才・・」と感心したように語る未沙に、輝は先輩風を吹かしてこう言った。
「一番危険なのは、自分を過信する事なんだ」

その言葉の底にある感情を、彼女が感じ取ってしまっていたとしたら・・そう思うと落ち着かなかった。

「やります。技術者が泣いて喜ぶデータを取ってきてやりますよ」

そう言い放って上官の部屋を出たものの、輝は落ち着かない気分を抱かえていた。
ふと、廊下の片隅に電話が置かれているのが目に入った。
ポケットから紙切れを取り出して、受話器をあげた。
紙切れを見ながら番号を押すと、しばらくしてから耳に馴染んだ声が聞こえた。

「早瀬です・・、どうしたの、一体・・」
「・・あの、この前のお礼って言うか・・。その、行ってもいいかな・・」

「別に・・いいけど・・」

挑戦できる高揚感より、不安の方が強かった。

早く未沙に会いたかった。
あの青すぎる空の上で、モニターに映った未沙を見た時の安心を、今この時・・感じたいと思った。

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2013-02-05 : 空白の2年間 : コメント : 8 :
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Re: No title
まみぃさん
いつもありがとうございます(#^.^#)
どこまでも青いってもの、三菱重工の元テストパイロットさんで、航空自衛隊の戦闘機乗りだった方のエッセイから頂きましたです・・(^_^.)
2016-07-22 22:27 : michy URL : 編集
No title
何度読ませていただいても、どこまでも青い場所シリーズ大好きで、癒されます。
2016-07-22 17:42 : まみぃ URL : 編集
Re: No title
COWさん、コメントありがとうございます!
なんかジリジリと妄想しております・・。この時期って、パーメモによると「未沙は輝を愛していた。輝も未沙を愛していた・・」けど、別に言わなくても解りあえてるよ自分たちって~~って輝が勝手に思ってる時期ですもんね。なんか悶々とします・・。スカッとイチャイチャさせたいのですが・・。
2013-02-10 22:10 : michy URL : 編集
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2013-02-09 16:06 : : 編集
Re: No title
コメントありがとうございました。
先輩に引き続き、輝には頑張って欲しいもんです。
次世代機種・・そうですよね~~ありがとうございました。
2013-02-08 23:12 : michy URL : 編集
Re: ぞくぞく
コメントありがとうございました。
ぞくぞくしていただけそうでしょうか・・。なんだかんだいって、ジリジリ書いていくと思うんで、よろしければお付き合いくださいませ。
2013-02-08 23:10 : michy URL : 編集
No title
テスト搭乗者に自ら志願させられチャッタのね(笑)
テストライダー、人身御供か人柱・・・・
生還で、満願成就させれば、先輩に続いて 生き英雄~!
次世代機種ともなれば、未沙とも進着状況報告会議やらの
と機種配属&導入&部隊編制&配機数、と接点増大!

しかも!テストライダーを勢いで引き受けたから
仲直りに一直線するし(行き当たりばったり)ええこっ茶
2013-02-05 23:12 : 敦賀屋バボ URL : 編集
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2013-02-05 21:16 : : 編集
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