SS moon diary 3

空白の2年間妄想です。ヒカミサ的にラブラブしきれず未沙がかわいそうになってくるので、今再び劇場版妄想が・・。

とりあえず、輝月面基地よりご帰還編です。

少し長いですが、よろしければお付き合いくださいませ(*^_^*)



その日、未沙はいつもより早く目が覚めた。
顔を洗って鏡を見てみたが、なんだか髪の流れ方が気に入らない。もう一度シャワーを浴びて、髪にしっかりとトリートメントをすると、やわらかくてまっすぐな髪になった。トリートメントの香りも嫌味なくふわりと香っている。
鏡を見て、未沙は小さく照れたように笑った。

今日は輝が月から帰ってくる日。未沙にとって、待ちに待った特別な日だった。

その日の知らせは唐突にやってきた。輝からのメールで連絡があったのだ。

帰る日が決まりました。7日後の午前中にシャトルが空港に到着予定です。もし、空いてたら飯行きませんか?

7日後・・。その日の任務は偶然にも非番だった事に、未沙は小さく手を叩いて喜んだ。

空港まで、輝を迎えに行こう。
その事を輝に伝えると、迎えに来てくれる人がいるなんて嬉しい・・という内容の返事が返ってきた。
嬉しかった。そして今日、とうとうその日がやって来たのだ。


未沙は鏡に映る自分を見た。
逢って、なんて言おうか・・。
ちゃんと自分の気持ちを伝えて、輝の気持ちも聞いてみよう・・。
両手で口元を押さえてそっと俯いて、彼女はいつものように、月に祈った。

どうか、勇気をください・・。



頑丈に作り直された新しい空港は、まだ少ない民間機と軍用機が共有して運用されていた。管制は軍隊が行っていたが、空港内に明るく作られた店舗が、かつての空港の賑わいを思い出させた。

少し早めに到着した未沙は、展望デッキでシャトルが現れるのを待った。そして、輝を乗せたシャトルが無事に到着し、着陸した事を見届けると、急いで到着ゲートに向かった。

輝はなかなか出てこなかった。

未沙はベンチに腰を降ろして、ぼんやりとゲートを見た。

「・・あっ」
懐かしい人影が、暗いゲートの奥に現れた。輝だった。輝は後ろから誰かに呼び止められた様で、体はジリジリと前に進もうとしながら、顔だけは後ろを向いて、何かを話していた。

輝が話していた相手と敬礼を交わすと、さっと向きなおってからすぐ、未沙を見つけた。

未沙もベンチから立ち上がった。

大きなカバンを持った輝が、笑顔で向かってくる。未沙は激しく鼓動を刻む胸をどうする事も出来なかった。

輝は未沙の前に立つなりカバンを床に落として、そのまま未沙を両腕で深く抱いた。
「・・ただいま」
耳元でそう言うと、彼女の感触を確かめるようにそっと力を込めた。

「おかえりなさい・・」
未沙はそう答えると、輝の背中に腕を廻した

輝の汗に似た匂いを感じながら、未沙はそっと目を閉じた。
かつて、ゼントラーディーの艦に捕らわれて、彼らの前で輝とキスをした。あの時よりも、ずっと厚くなった輝の体幹と広くなった背中。逞しくなったこの躰は、確かに輝自身のものだった。

もう、余計な言葉を重ねる事もない、彼からの言葉も待つ事はない・・。
両腕で感じ取った存在感に、未沙はもうそれ以上、なにも望む事など無いと思った。


誰かが吹いた冷やかしの口笛で、二人は体を離して、不器用に微笑みあった。

「やっぱり地上はいいよ。アポロはマクロスみたいに街がないし、食事だって初めは美味いと思ったけど、だんだん飽きてきてね」
並んで歩きながら、輝は未沙を見た。
久しぶりに見る彼女は、なんだか前よりもきれいで、少し華奢になったように見えた。
「メールでも、食事の事をよく言ってたものね。ねぇ、何が食べたい?」
「もう決まってるんだ、唐揚げ・・って言うか、作ってくれるの?」
「唐揚げね、りょーかい」
「やった!」
輝は体を躍らせて、未沙を肩で突っついた。
未沙が笑いながら軽くよろけると、輝は彼女の手を取った。

あぁ、帰ってきた・・

未沙と繋いだ手のぬくもりに、輝の躰からホッと力が抜けた。

スーパーでの食材選びは、あれが食べたいだのこれは嫌いだのと大騒ぎして、ようやくレジにたどり着いた。
山のように積まれた食材をもう一度見て、未沙は大丈夫かしらという顔で輝を見た。
「ねぇ、輝の言う事を聞いていたら、こんなにたくさんになったのよ。本当に食べれらるの?」
「今日だけの分じゃないから大丈夫だろ。また作ってよ」
「もう・・!」
未沙は俯きながら輝から目をそらした。
頬と首筋が紅く染まっている。

かわいいな・・

未沙の背中を流れる髪ごと抱きしめたい衝動にかられたが、レジの順番待ちの途中でもあって、ぐっとこらえた。
輝は思った。まだ午前中だ。一緒にいられる時間はたくさんある。
ひょっとして、今日・・二人は今までとは違う、もう少し進んだ関係になれるかもしれない・・。

そのきっかけを作るのは、自分か・・彼女か・・。

「ねぇこれ持って。ジュースをたくさん買ったから重いの」
「ああ、ごめん」
輝は未沙に駆け寄って、食材の入った袋を持った。

久しぶりに帰った輝の宿舎は、未沙が預かっていた鍵で開けられた。
「はい、返します」
未沙は持っていた鍵を輝に差し出して、持ち主に返そうとした。輝は小さく首を振って言った。
「それ、ポストに入れとくから」
キョトンとして輝の言葉を聞いていた未沙だったが、ようやく彼の言葉の意味が解ったようだった。
「も、もう!どうせ掃除してくれって言うんでしょ」
「はい正解!入ろう、ただいま~」
輝は未沙より先に宿舎に入った。


未沙が食事を作ってくれている間に、輝は荷物の整理をした。元々多くない荷物だったこともあり、その作業はすぐに終わった。

輝は部屋の中を見回した。

留守の間、未沙に宿舎の様子をみてもらうために鍵を預けた。「ついでに掃除もしといて」と輝が言った通りに、彼女はちゃんと埃をはらってくれていた。

昔集めていたミンメイの写真を貼ったアルバムも、動いた様子はなくて、ちゃんとそのままの場所に置かれていた。

―これはまぁ、いいんだけど・・―

隠し撮りに近い未沙の写真を貼ったアルバム・・。あれを見られていたら、まずい。
机の引き出しを開けると、輝が隠した状態のまま鎮座している。

よかった・・。

「輝?」
部屋のドアをノックしながら未沙が呼びかけてきた。
輝はちょっとばかしドキッとしたが、平静を装って返事をした。
「何?もう出来たの?」
「ええ、早く来て、冷めちゃうから」
食事のいい匂いがする。引き出しをパタンと閉めて部屋をでた。

「すごいじゃないか」
未沙の手料理を食べるのは今日が初めてだったのだか、本当に美味しそうだった。肉も野菜もあってバランスがとれているし、なにより輝が食べたいと言ったものを全て作ってくれていた。
「たいした事は出来ないけど、これでも頑張ったのよ・・味付け、気に入らなかったら言ってね」

「・・って言うかさぁ、俺、飯を他の人に作ってもらったの、久しぶりで・・」
テーブルの上の料理を見ていると、なんだか胸の中が暖かくなる。長い間忘れていた、家庭の空気がそこにあった。

「私も、誰かに食事を作るのって、久しぶりなの。嬉しいわ、そう言ってくれて」
未沙も満ちたりた顔で笑っている。彼女の幸せな笑顔を見るのは、ひょっとして今日が初めてなのかもしれないと輝は思った。
「食べよう、腹減ってきた」
「うん」

二人でテーブルに着こうとしたその時だった。

電話のベルが鳴った。
輝はめんどくさそうに椅子から立ち上がった。
「なんだよ、こんな時に・・」
未沙も残念そうに小さく笑った。



「はいっ一条です・・えぇ!!ミンメイ?!!」
その時、輝の背中が大きく跳ね上がるのを見た。
「え~っ!なんで今日帰ってきたって知ってるの??あぁそうなんだ・・」

早く・・来てくれないと、食事が冷めちゃう・・。
未沙はテーブルの上の食事を見た。
「今?今いいよ、全然大丈夫」

全然大丈夫・・・

どんどん躰から力が抜けていく。今日の朝からの、あの幸せな時間さえもかき消されてしまうようだった。
例の彼女の声は、時々もれる笑い声以外は聞こえない。ただ、輝の話す内容で、二人の間でどんな会話が交わされているかがなんとなく解る。

仲がよさそうに見える二人の様子に耐えられなくなって、未沙は席を立った。



突然激しくドアを閉める音がしたので、輝は振り返った。
テーブルには未沙の姿は無く、部屋を見回したがやっぱり彼女は居なかった。

輝の様子が変わった事を、ミンメイはどうかしたのかと聞いてきた。
「・・ごめん、彼女が怒って帰っちゃったみたいで・・」
驚いた様子で彼女がいたのかと言うミンメイの言葉に、輝自身がハッとした。
「いやあの・・正式に付き合ってる訳じゃないんだけど・・。とにかく、今日は電話ありがとう、元気でね、またね」

輝は受話器を置いて、未沙を探して走り出した。



怒るより先に、涙が出た。
所詮、大事にされていないと思ってしまう。実際、彼の行動からは自分を一番に考えてくれているとは思えなかった。

嫌いになれたらいいのに・・。あんな酷いヤツ・・。

「未沙!待って未沙!」
輝の声が聞こえて立ち止まった。一瞬振り返ったが、再び背を向けて歩き出した。

「ごめんって!悪かったよ、一緒に食べようよ」
輝は未沙の腕をとって、彼女を振り返らせた。
「イヤよ!だってもう冷めてしまったもの!」
「そんなの温めたらいいじゃないか!」
「出来立てを食べて欲しかったの!」
未沙は輝の手を振り払った。
輝もムッとして強く言った。
「なんだよ、久しぶりに電話をくれたんだ、ちょっとくらい話してもいいじゃないか!」

その言葉を聞いて、未沙の目に涙が溢れ、それを見た輝の胸も痛みのような鋭いものがギリギリと引っ掻いた。

そのまま背中を向けて歩き出す未沙に、輝はなにも言えず、追いかける事も出来ずにたちすくんだ。


未沙は自分の宿舎に帰ると、強い疲れを感じてベッドに転がり込んだ。涙が止まらなかった。
・・お化粧、落とさないと・・
そう思いながらも立ち上がる事が出来ず、未沙は眠りについた。


遠く向こう側で、玄関のベルを鳴らす音が聞こえた。何回か続いていたがやがて静かになった。
未沙が起き上がると、もう部屋は薄暗くなっていた。
いろんな事がありすぎた。ぼんやりした頭で玄関に向かう。モニターで確認したが、もう人影はない。
念のため、ドアを開けてみたが、誰もいなかった。

来るわけないわよね・・。

そう思ってドアを閉めようとした時、外側のドアノブからバサリと何かが落ちる音がした。
見てみると、紙袋が転がっていた。

中身を見ると、ペンギンのぬいぐるみが入っていて、小いさな紙切れが入っていた。

―今日はすいませんでした。ちゃんと食べました。とても美味しかったです。今度は出来立てが食べたいです。
鍵はポストに入れてあります。 ヒカルー

未沙は紙切れと一緒に入っていたペンギンのぬいぐるみを見た。
その横に広がったずんぐりとした顔に、おもわず笑みがこぼれてぎゅっと抱いた。

そういえば・・。
あの「月の手帳」 moon dairyの今日の占いには、「トラブルがきっかけとなって、人との関係が深まる日」と、書いてあった。

今度彼に逢ったら、ちゃんと仲直りしよう・・。

あれほど泣いたベッドに、今度はペンギンを抱いて横になった。
ほんの少し、幸せの予感を感じながら。



おわり

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2012-05-01 : 空白の2年間 : コメント : 2 :
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非公開コメント

拍手レスです
敦ヶ屋バボ様
コメントありがとうございました。
そうですね。この二人の関係って陸上ペンギン並みの速さ・・。
ワタシも早く水中ペンギンの速さにしたいです(^_^;)
2012-05-06 22:48 : michy URL : 編集
拍手レスです
非公開コメント様
コメントありがとうございます。
そうなんですよね~・・。なんか未沙がかわいそうな展開になりがちなんですよね~・・。
テレビシリーズ第2部なんて、まさにハラハラしましたもんね。最後には挽回できるように・・。その前に、また劇場版で遊びたいです(^_^;)

のんきな母様
コメントありがとうございました。
輝月面基地勤務は、パーフェクトメモリーっていうムック本に裏設定的に載ってますよ。この本は今でも古本屋(まんだらけとか)でよく見かけるので手に入りやすいと思います。
あの空白の2年間のCDは、他の方のレビューを見て、買うのを止めました・・。パーメモちゃんと読んで欲しいですよね!
ええ!SSをお書きになった?すごいじゃないですか~。おっしゃる通り、セリフを並べて状況を説明するのって難しいですよね。また公開されたら教えてくださいね。
2012-05-06 22:36 : michy URL : 編集
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