SS 街歩き

テレビ版SSです。23話「ドロップ・アウト」の辺りです。

ゼントラ兵が、マイクローンになってマクロスに亡命したとこっす。

オチ無しなんですが、よろしければ、お付き合いくださいませ(*^_^*)




なんのために戦うのか・・。めずらしくそんな殊勝な想いにとらわれて、あっさり導き出した答え。

「ミンメイを護るために戦う・・」

でも、そんな硬いのか薄いのか解らない誓いは、ある光景を見た瞬間、あっさりと空虚なものになった。
恋するミンメイが、情熱的にキスする光景。それは映画ではなくて、リアルにあの従兄のカイフンと唇を合わせ愛し合っている光景・・(に見えた)。

彼女が護って欲しいと思っている相手は、俺じゃない・・。

今までだって、似たような事はあった。トランスフォーメーションで、未沙と一緒に閉じ込めらた空間から解放された時、カイフンとミンメイが、仲良くホテルに入って行ったのを見た。あれは、ただホテルに食事をしに行っただけと、何回も呪文のように唱えてみたりしたものだった・・。

でも、今回は・・。

ミンメイは、今は夢に向かって一生懸命ですれ違いばかりだけど、いつかは気持ちが通じ合って、傍にいてくれるようになる・・。そんな想いで、いつも不安な気持ちを慰めていたのに・・。

ヤケッパチになって敵を撃ちまくった。ヤケで撃った銃弾の全てが敵に当たるはずがない。流れ弾が街を破壊する。ハッとした時には、輝の撃った銃弾が、ビルを破壊してしまっていた。

全身に冷や汗が流れて、ケガ人がいないかを確認した。幸いなことに、ケガ人はいないらしい。
ホッと力を抜いた時、至急撤収し、第3会議室にくるようにとの指令が入った。


「一条中尉、電話だよ」
整備要員の一人がPHSを渡そうと手を伸ばした。
エンジンの筒の中に入り込んで、他の整備要員と話しながら作業していた輝は、当然その電話を取ろうとしなかたった。

「・・あの、今緊急な整備中で・・」
取次に出た整備要員は、そう言いかけて、マズイよなぁ・・という顔で、もう一度輝にPHSを差し出した。
「あの・・早瀬大尉がものすごく怒ってるんですけど・・」
その名を聞いて、ようやく顔を上げた輝は、面倒くさそうにPHSを受け取って大仰に言った。
「今、エンジンのトラブルの原因を確かめてるとこなんだ。後にして・・」
「一条君何言ってるのよ!これは命令なのよ!早く来なさい!」
狭いエンジンの中で、未沙の怒鳴り声が響き渡って、一緒にいた整備要員の顔も引きつった。
「あのさ!おおかた原因は特定できたんだ!今離れられるかよ!」
「じゃぁ、どのくらいで来れるのよ!」
「あぁ、10分!」
「5分で来て!」
そう言い放って、通信は途絶えた。
「まったく可愛くない女だよ」
そう言ってPHSを置くと、輝はまた作業に取り掛かった。
怒るでもなく怖がるでもないその輝の穏やかにも見える表情に、一緒にいる整備要員は感心するように言った。
「パイロットのほとんどは、早瀬大尉と話すとき、もっと緊張してる雰囲気ですよ。中尉は彼女と仲良いんですか?」
「仲良いわけないっすよ、ただのケンカ相手だよ」
「そんなとこですか?」
整備要員の反応を無視して、広げていたノートパソコンの画面を覗き込んだ。
「おそらく、これでいいと思うんです。悪いけど、あとはよろしく」
「了解・・」

エンジンから飛び降りて、とろとろ歩く輝の背中をみて、整備要員はつぶやいた。
「ケンカ相手ねぇ・・」

怒鳴る未沙への当てつけもあって、のんびり歩いて呼ばれている場所に行った輝だったが、小さくなった異星人の3人を見て、ようやく事の重大性に気が付いた。
いつもは上官の管制官として、輝たちに指示を出す立場の彼女が、たった一人で必死になって上層部を説得しようとしている。異星人たちを護ろうとする彼女の横顔は、なんだかとてもきれいに見えたし、同時に自分が少し頼りなく思えた。


グローバル艦長の英断により、小さくなった異星人たちは、このままマクロスに迎え入れられる事となった。
ほっとして、マックスと輝と未沙の3人はゆっくりと廊下を歩いていた。並んで歩く二人を見て、マックスがにっこり微笑んで言った。
「なかなかの連携プレーじゃないですか。やっぱりお二人って結構気が合ってますよね?」
輝は呆れ顔でマックスを見た。
「あのなぁ、来るまで散々ケンカしてたんだよ。あの時はたまたま!」
「そうよ、一条君たら、なかなか来てくれないんだもん」
未沙が拗ねるように言うと、輝は未沙に向き直った。
「っつうかさ、こんな重要な事だって解ってたら、すぐに来たって。なんで言ってくれないんだよ!」
未沙も負けじと彼に向き直って両腕を組んだ。
「バカね!あんなこと、通信で喋れるわけないじゃない!あんなにも切羽詰ってたんだから察してよ!」
「あんたいつも切羽詰ってるじゃないか!」
「まぁまぁまぁ・・」
睨み合って怒鳴りあう二人にマックスが割って入った。
「とにかく、重要な案件をクリアできたんです。みんなで食事でも・・ってお邪魔かな?僕はこれで」

飄々と背中を見せるマックスを、二人はきょとんとした顔で見送った。なんとなく目があったが、怒鳴りあったばかりの二人は、フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

「もう!ついてこないで!」
「俺もそっちに行くの!」
「そっちって、どこよ!」
「街を見に行くの!」
「・・じゃぁ、同じ目的地ね・・」

だったら仕方がない・・。そんな風に妙な納得をした二人は、街に向かって歩き出した。

街は思った以上に破壊されていて、それを観る二人の気持ちを重く圧迫した。
おそらく自分が壊してしまったビルの一角を見て、輝は足を止めた。
「・・守りきれなかったな・・」
ちらっと輝を見た未沙は、すぐに視線をまっすぐに戻して、ふたたび街を見つめた。
「そうね・・。私達の責任ね・・」

静かに話す未沙に、輝は黙っている事が辛い事を吐き出す決心をした。
「白状するけどさ、この辺り、俺の誤射の被害なんだ・・」
「そう・・でも、それは仕方がないわ・・」
「バカやったもんだ。彼女が男とさ・・仲良くしてるとこ、直前に、たまたま見ちまって・・」
未沙がそっと輝に顔を向けた。
「男って、カイフンさん・・?」
未沙の前で、さすがにそれは言えなかった。
黙る輝に、未沙は静かにつぶやいた。
「それでも、あなたはちゃんと敵と戦って、彼女達の救護の依頼までして・・。よくやったじゃない」

非常事態の任務中にミンメイの事で頭がいっぱいになっていて、誤射とはいえ、やけになって民間人の施設を破壊した、バカな自分。
その事を、早瀬未沙におもいっきり怒鳴られてしまえば、少しでも楽になれるだろうか・・。そんなふうに思っていたのだけど。

「あんまり俺を甘やかしちゃだめだよ。ダメなもんはダメなんだから・・」
そんな事を言う輝に、未沙はプッと笑って言った。
「怒るなって言ったり、怒れって言ったり、難しいわね」
そんな未沙に誘われて、輝も少し笑った。

二人の間の空気が暖かくほぐれた。

「早瀬大尉は、きっと凄い志があるんだろうな、俺と違って・・」
輝は歩きながら、俯いて石を蹴った。
コロコロと、二人の前を石ころが転がる。
「そんな・・志なんて・・。軍隊に入ったのも、好きな人がいたからだし、父の七光りだって言われたくないから、必死になって・・。それで、たまたま今ここに居るだけで・・」

未沙から香る、柔らかな何かに、輝は目を細めた。

「軍隊に入らなかったら、夢はお嫁さん?」
「どうして?」
「いや・・女の子はそんな風に考えるものなのかなって・・」

輝の頭には、軍隊に入る前の、あの閉鎖された空間での、ミンメイとの結婚式未遂の事が浮かんでいた。

「そうね、ウエディングドレスは、着てみたいわ・・」
やさしく顎をあげて、少し上を眺める未沙の横顔を、輝は横目で眺めた。

二人は気が付いていなかったが、輝は未沙の事を、「女の子」と言った。
この事は、もう二人にとって当たり前だからなのか、それとも二人して、とんでもない鈍感だから気が付かないだけなのか・・。

肩を並べて歩く二人は、そんな事など考える事もなく、ただぼんやりと、街を歩き続けた。


おわり

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2012-01-15 : 第一部 : コメント : 0 :
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