SS きぼうのひかり 7

うううっ・・たくさん拍手ありがとうございます(T_T)
今度こそ、御礼画らしい御礼画でも出来たらいいなと思ってます・・。

で、もう7回目です。
やっぱりここかの劇場版放浪記。

よろしければ、お付き合いくださいませ(*^_^*)

来週も更新できたらいいんですが・・。







追いかけてきてくれる。
そんな自分勝手な思い込みは、あっさりと崩れ去った。
未沙は、立ち去る輝を追いかけては来なかった。

輝がついうっかり未沙に大声をだしてしまったのは、イライラしていた訳でも、彼女が嫌いな訳ではない。むしろその逆で、彼女が愛しくて、もう止まらなくりそうで・・。

悶々と、考えだけがぐるぐるとまわってしまう。
想いを彼女にぶつけて、おもいっきりきつく抱いてしまえば、このたった二人しかいない状況で、未沙は拒むことは出来ないはずだ。
彼が一人する行為のなかで想像する、未沙のように。

任務から離れた彼女は、やさしくて、ちょっと鈍くさくて、頼りなさげでいながらも、芯の強さを感じさせてくれる。
あのやわらかい髪と、すべらかな肩と、ふっくらとした胸に抱かれたら、どんなに幸せだろう。

でも、その想いとは逆の方向にいつも引っ張られてしまう。
輝がついイライラして、暴力的な言葉を吐いてしまったり、物にあたったりする光景を見て、未沙は少し怯えた顔をして小さく躰を抱かえた。

彼女がやさしくしてくれるのは、もうこれ以上輝が暴走しないように、気を付けている為だけかもしれない。

そして・・。もしかすると、未沙にはもう、恋人がいて・・。あのやわらかな躰を、他の誰かに・・。

息が詰まって、急に立っていられなくなった。
両膝と両手をついて、頭を地面に擦り付けて唸った。

人を好きになることが、こんなにも苦しい事だなんて、知らなかった・・。

愛しい気持ちと、罪悪感から湧き起る自信の無さが、ジリジリと挟み込むように輝を締めつける。このままでいると、自分自身の勝手な想像で、信頼されてないと落ち込んで、いるかどうか解らない相手に嫉妬して、不安になって、未沙が好きな気持ちまで、違うものに変わってしまいそうだ。
しばらくは、未沙の前に立てそうもない・・。
その日、輝は未沙と一緒に寝起きしているテントには帰らずに、朝を迎えた。

一人でいたら頭が冷やせるかと思ったものの、結局眠れない夜を過ごしてしまった。ぼんやりとした頭で未沙がいるテントに向かうと、彼女は焚火でお湯を沸かしていた。

「あっ一条君・・!」
はっと顔を上げたその顔の瞼は、どことなく腫れているように見える。ひょっとしたら、彼女も眠れなかったのかもしれないと思った。

なにも言わず焚火の前に座った輝に、未沙はペットボトルを切って作ったコップにお湯を入れて差し出した。輝がそれを手に持つと、未沙も、お湯を入れたペットボトルのコップを両手で包んだ。

静かに時間が流れた。

ふいに未沙が立ち上がって、テントの中から何かを持ってきて、輝にそっと差し出した。それは、きれいにたたまれた、彼の黒いアンダーシャツだった。

「昨日、洗っておいたの。空気が乾燥しているから、すぐ乾いたわ」
手に取ると、あれほど砂と汗にまみれたあの汚れたシャツが、きれいに洗われていて、きちんと畳まれていた。

「ありがとう・・」
輝は手の中のシャツをじっと見つめた。
すぐに袖を通したかったが、こんなにきれいに洗われたシャツを、汗まみれ体のせいで汚してしまうのは忍びない・・。
「ちょっと、水浴びしてくる」
未沙にそう告げると、彼女はほっとしたように微笑んで、「うん・・」と頷いた。


輝はふと、昨日の朝に拾った、ガラス玉がポケットに入っている事を思いだした。未沙にあげようと思って拾い上げた、あの表面が擦られた、空色のガラス玉。ゆっくりと取り出すと、それは朝の光に輝いて、さらに透明度を増しているように見えた。

「早瀬さん・・」
ガラス玉をぐっと握った片手を、未沙に向けて差し出した。
「あの・・これ・・」
輝が何かを渡そうとしていると感じ取った未沙は、手のひらを空に向けて差しだすと、輝は贈り物を未沙のやわらかな手のひらに、そっと転がした。
「食べ物じゃなくて、ごめん・・」

空色のガラス玉は、未沙の手の中でふんわりと輝く。
「一条君・・」
顔を上げた時には、輝はもう水浴びが出来る小川に向かって歩き出していた。
その背中を見送ると、未沙はガラス玉を親指と人差し指で挟んで陽に透かした。光を帯びたガラス玉を見つめる未沙の瞳も、それと同じように光をまとった。


水浴びを終えてテントに帰ると、未沙はしゃがみこんで何かをしているようだった。輝が帰ってきた気配を感じて振り返り、ふっと髪の毛を撫でつけて小さく笑った。

「さっぱりした?」
「うん・・」

寝不足で、頭がぼんやりしている分、今日は彼女の顔を見つめていられる・・。
そんな風に思いながら、なんとなく視線を合わせていると、「・・あっ・・」と未沙がつぶやいて、立ち上がって輝に近づいてきた。
「血が出てる・・」

そういえば・・。サバイバルキットに入っている小さめのナイフで髭を剃っているのだが、いつも十分に気を付けているのに、今日はぼんやりして刃を滑らせてしまったのだ。

輝が頬に手を当てるより前に、未沙が指先をそこに当てた。
やわらかな、彼女の指先が輝の頬を押す。鉄の匂いが輝の鼻先をかすめた。

輝の頬に視線を送る未沙をじっと見た。視線に気が付いて、離れようとする未沙の手背を、輝は絡めとるように掴むと、そっと頬から離した。

「・・他人の血を、素手で触っちゃダメだって、教えられなかった・・?」

低くつぶやく。もう、未沙から目を離せない。未沙が息を止めたのが解る。まるで捕えられたように、未沙は輝から視線を離す事ができないようだった。

「・・待って、待ってほしいの・・」
彼女が絞り出すように声を出した。
「・・もう、十分待ったよ」

輝は未沙を抱きしめようと腕を絡めると、未沙は両手を畳んで輝の胸を押した。
「一条君・・、待って・・」
「何で?俺の事、やっぱりイヤ?」
「イヤじゃない・・でも、少しだけ待って欲し・・」
未沙の言葉を聞いていられる余裕なんてなかった。呼吸さえ奪うほどきつく抱きしめて、唇を合わせた。
はじめ、きつく閉められていた彼女の唇は、輝の舌先の動きに誘われたように、徐々にほころんでいく。初めて触れる彼女の舌は、薄くて、滑らかで、暖かくて。
唇を合わせながら未沙の腰をじっと引き寄せて、輝との間でつぶれている胸に手を当てた。

「ん・・」
未沙の吐息が輝を決断させたその時、地面が揺れ始めた。
始めは無視できる程度だったが、もう躰を支えあわないと立っていられないほど激しく揺れた。
「地震・・?」
二人は抱き合ったまま、一瞬呆然としたが、すぐに輝が未沙の手を引いて走り出した。
「高い場所に・・!」
「ちょっと待って!あれ!」
今度は未沙が輝の手を引いて、海の方向を見て叫んだ。
「あんなもの、今までなかったわ」
「岩礁・・?いや、あれは確かに人工物だ!」

一体何があったというのだろう。水平線の近くに、確かに何かが見える。船か?それとも、何か落下した飛行物体か?突然現れたそれは、水しぶきをあげながら、陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

海から、まるで二人を呼び寄せるように風が吹き始める。

「行ってみたい・・私、あそこに行ってみたいわ」
未沙は叫ぶように言った。
「よし、行こう」

それは浮かび上がった古代の遺跡である事など、まだ知る由もない。
二人は手を取り合って、森の中に静かにうずくまるバルキリーに向かって走りだした。

スポンサーサイト

2011-11-18 : SS きぼうのひかり : コメント : 2 :
コメントの投稿
非公開コメント

Re: No title
ありがとうございます!ワタシもこのシーンは気に入ってます。
他人の汗を除く体液のすべてが感染源とみなされます。
2016-07-24 22:13 : michy URL : 編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-07-22 22:52 : : 編集
« next  ホーム  prev »

プロフィール

michy

Author:michy
記事へのコメントは、予告なく削除する場合があります。また、記事と関係のないコメントにはお返事しないか削除する場合があります。