SS きぼうのひかり 6

週末更新が目標のSSです。

やっぱりここかの劇場版放浪記・・。

はじめてお越しの方は、カテゴリの「きぼうのひかり」からおはいりくださいませ(*^_^*)
下の日付が古い記事から、上がって読んでいただけたら・・とおもいます。

では、よろしければ、ワタシの妄想にお付き合いくださいませ(^_^;)






朝日を浴びながら、輝は一人で浜辺を歩いていた。
この浜辺を野営地に選んで、もう何日も経つ。ここには真水もあって、食糧もなんとか調達できるし、なにより、自然が残っている。

しかし、便利さに慣れた輝たちは、ここで生きるために色々な工夫も必要だった。浜辺を歩くのは、のどかな朝の散歩ではなく、使える物が漂着していないかを調べるためだ。
それまでゴミでしかなかった、ペットボトルや洗剤の空きボトル、軍手、建材の端くれ。とにかく、使えそうなものは何でも拾い集めた。このごろは、朝の日課になっている。

楽しい作業ではない。
ただ、彼女を不安にさせないために、おおげさに成果をアピールして見せていた。
「ゴミって宝の山だったんですね!」

ゴミときれいな砂の境界線を越えると、そこは波打ち際だ。湿った砂の上は少し硬く感じられて、かつて、ある事が普通だったアスファルトの上を思い出させた。

輝は湿った砂の中の黒い石に混じって、小さく光るものを見つけた。
手に取ってみると、それはガラスのようだった。小指の先ほどの小さなガラスの玉。薄い空色で、すりガラスのように表面が擦られている。

今回の爆撃で飛び散ったガラスの破片でない事は確かだと思った。
喜ぶ顔が見れるだろうか。
そう思って、ポケットに入れた。



人を好きになるのに、理屈なんかいらない。

輝はとりあえず拾い集めてみたゴミを再度使えるかどうかの仕分けをしながら、たまにしか見なかったテレビのドラマで、主人公が言っていた台詞を思い出していた。
今、早瀬未沙を女性として意識してしまっている。たぶん、もう、意識するという段階は超えてしまっているだろう。
しかし、この異常な状況で、たった二人でいるのだ。吊り橋の上で、男女が一緒にいると、恋に落ちる・・。そんな話も聞いた事がある。今の気持ちが、本当に自分の心からのものなのか、正直なところ、彼にも解らなかった。

それに・・。こんな状況に、未沙を引きずりこんだのも、ミンメイに恋をした事がきっかけだった。あの時、「もう、歌を唄うのも疲れた・・」と言う彼女を癒してあげたかった。
彼女が宇宙のどこかで行方不明になり、今一緒に居るからと言って、今度は「あなたの事が好きになりました」などと、未沙に言えるはずもない。

未沙に、気持ちを悟られてはいけない。

でも、こんなに近くにいて、いつまでそれが出来ると言うのだろうか。
会えない時間がある、という事は、どれほど恵まれた環境なのだろうかと思う。他の人と関係の無い話をしたり、任務で疲れて眠ってしまえば、想いはほんの少しでも軽くなるかもしれないのに。

昼間はまだいい。体を動かしていれば、それなりに気がまぎれる。
つらいのは、感覚が内向きになりがちな、夜だ。
未沙が寝返りをうって、ふう、と息を吐く。
その生理的な吐息と、長い髪から白く浮かび上がった細い顎と首筋、吐息で揺れる胸、小さく開いた濡れた唇。
輝の胸も、胸以外のその場所も、熱くなった。

いっそ、このまま抱きしめてしまおうか・・。
起き上がり、彼女を見た時、あの光景が頭に浮かんだ。初めてこの浜辺に降り立って、失神した未沙を抱いて、バルキリーから飛び降りた時。あの時、バランスを崩して二人で倒れ込んで、目を覚ました未沙は、輝を突き飛ばして、怯えた目で逃げようとした。

もう彼女を傷つけたくない。
そして、あの時のように拒絶されるのが、怖い。
だが、輝もいつまでも我慢できるものでもない。耐えられずテントから出て、輝は未沙に絶対に知られたくない事をした。

一体、こんな日々がいつまで続くのか。
快楽は一瞬で、終わった後には寂しさすら感じる程だった。



日が高くなってきた。秋だというのに、昼間はまだ暑い日もある。
未沙はいつものように、毛布を干したり、乾燥して保存できる食材の処理をしているのだろう。
今、この暑い浜に居るのは輝だけだ。
彼はつなぎの艦内服の半身と、暑苦しい首回りのアンダーシャツを脱いで、上半身を裸になって、熱い砂浜に寝ころんだ。

気持ちよかった。まるで、たっぷりのお湯に浸かっているような感覚で、頭の中まで溶けそうになる。
じっと目を閉じた。疲れもあって、そのままウトウトと眠ってしまった。


「一条君一条君!」

呼ぶ声がした。昼間の眩しさに耐えながら、じんわりと目を開けると、未沙が必死の表情で輝の顔を覗き込んでいるのが見えた。

「一条君!大丈夫?」
「・・早瀬・・大尉・・」

輝の上半身が起き上がると、未沙は彼が半裸でいる事を意識したようだ。
顔を赤くして小さく俯いた。
「びっくりしたわ・・。もう、こんな所で寝ちゃってるから、どうかしたのかと思って・・」
彼女はほっとしたように吐息をついた。

「・・砂風呂っていうか、気持ち良くて・・」
未沙の前で上半身が裸な事が、妙に気恥ずかしい。ねぼけた頭で、ゆるゆると服を着ようと思ったが、汗をかいた背中に砂がたくさんくっついている。すぐには服を着れない・・。

「あの・・悪いんですけど、これで砂を落としてくれますか?」
輝は未沙にアンダーシャツを差し出して背中を向けた。
「えぇ、いいわ」
ちょっと笑って未沙はシャツを受け取ると、丁寧に砂を払い落し始めた。

すぐに輝は後悔した。背中の砂など、ざっと2回ばかりさすっただけで、払い落とす事が出来ると思ったのに。
未沙は小さく手を動かして、時にはシャツの上から指先が感じられるような丁寧さで、徐々に背中から腰に向けて手を滑らせていった。

「早瀬大尉・・、もう、いいです・・」
「あら、でもまだ、たくさんくっついているのよ。なかなか取れないわ」
そう言ってシャツを置いて、その細くてやわらかい手のひらで、輝の背中をすっと撫でた。
なんとか気を散らしていたのに、もう限界だった。
「もういいって言ってるじゃないか!」
怒鳴りながら振り返ると、未沙が驚いてさっと手を引いた。

「ごめんなさい・・余計な事まで・・」

違うんだ、そんな事をされていたら、もうここで、君の手を掴んで、そのまま倒れ込んで抱いて、つぶしてしまうくらいに抱いて・・。

ギュッと目をつぶって立ち上がって歩いた。
未沙は追いかけてこなかった。

こんな日が、いつまで続くんだろう・・。

叫びたい気持ちを、どこにぶつけたらいいのか・・。
腫れ上がった頭では、どうしればいいのかなど、思いつくはずもなかった。

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2011-11-11 : SS きぼうのひかり : コメント : 0 :
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