SS きぼうのひかり 5


今週は、更新するのは無理かな~と、思ってましたが、なんか、書けたのでうpします・・。
やっぱりここかの劇場版放浪記。5回目です。

よろしければ、お付き合いくださいませ(#^.^#)
では、仕事行ってきます。




一緒に居てほしい。
それはどうしようもなく、心からの言葉だった。未沙の視線を受け止めきれない苦しさはあるにせよ、近くに彼女がいてくれるのは、なんだか心地よかった。

その日は一緒に近くの集落を確認する事にした。野営した入り江の浜には、元々集落がない場所のようだった。浜の奥には森があって、そのまま山になっている。小さな河が真水を供給してくれる、ありがたい場所だ。自然に出来ている山道を、二人で登っていくと、しっかりと作られた林道につながって、そこを歩いていくと、目的の集落があった。

立ちすくんでしまう未沙を置いて、輝だけが、かつて街だった場所に降りた。
未沙に、見せたくない光景だった。
「帰りましょう。今日の山登りは天気も良くて気持ちよかったですよね」
さらりと笑う輝に、未沙も目指した集落がどんな状態かが解ったようだ。「うん」と頷いて、彼の後について歩こうとした。
歩き出した未沙が、小さく振り返って、はっとした。
「一条君・・なにかある・・」
「え、何?」

集落の外れの森に、青い大きな水槽らしきものが見える。
「あれ、あそこは無事みたい・・」
「行ってみよう」
足が急に軽くなる。輝は咄嗟に未沙の手を握り、未沙も輝の手を握り返した。二人は荒れた道をかばいあうように進んだ。

やはり、それは水槽のようだった。
囲んでいた建物の一部は壊れていたが、水槽は無事だ。
「誰かいませんか!!」
輝が叫ぶが、返事はない。

「見て!一条君!」
水槽を覗き込んだ未沙が声をあげた。
「あぁ!すごい!いっぱいいる!」
「ほんと、美味しそう!」
未沙は輝の腕に抱きついた。

それは、高級魚のヒラメの養殖水槽だった。持ち主は行方不明だが、ヒラメたちは電源の切れた水槽で、なんとか生き延びていた。

「美味しそうって・・お嬢様、はしたないなぁ」
ニッと笑いながら見下ろされて、未沙は頬を赤くしてから、輝の腕をパッと離した。
「なによ!同じ事考えてたくせに!」
「その通り!僕の気持ち、解ってくれました?」
さっそく、食べられる分だけを、近くにあった網ですくい取った。

その日の収穫は、それだけではなかった。養殖場の裏手に、持ち主が作っていたと思われる小さな畑があって、そこに、獣に荒らされていない作物がたくさんあった。
「イモだ!ジャガイモ!」
当然、レタスなどの葉物より、ずっとありがたい収穫物だ。顔を見合わせて笑い、二人でイモを掘り返した。



その日の夕食はご馳走だった。イモの炭水化物とヒラメのタンパク質は、二人の胃袋を久しぶりに満足させた。

夕食を終えると、未沙は横になった。まだ、体が本調子ではないのに、今日は無理をして輝と一緒に山道を歩いたのだ。

はしゃいだ昼間とは対照的な、静かな夜だった。

輝は、冷えてきたテントの中を温めようと、浜に流れ着いて乾燥した流木を燃やし、炎を小さくしてから、炭火のようにして暖をとった。

てらてらと赤く燃える火の向こう側で、未沙が小さくなって横たわっている。

静寂の中、未沙の穏やかな声がテントにやんわりと響いた。
「不謹慎かもしれないけど・・今日は、なんだか楽しかった・・。一条君って、やっぱり面白い・・」
「面白い?どういう意味?」
「うふふ、面白い・・」
未沙は微笑しながら、小さく俯いた。

「それに、すごいのね・・」
「何がです?」
輝は味気なく返事をした。
「あなたたち、バルキリードライバーよ・・。サバイバルもこなして、あんな過酷な飛行もやってのけて・・。私も、当然知識として、あなたたちが過酷な状況で任務を果たしている事は知っていたわ・・。でも、経験したのは、初めてだもの・・」
輝が操縦するバルキリーで、レーザー警戒装置が作動し、敵に狙われたと思い加速して逃げた時。あの時、未沙はGで失神してしまった。その時の事を言っているのだろう。

「じゃあ、今度からエリア308に、30秒以内に行けなんて、無理言わないでくださいね」
輝は少しおどけて返した。未沙もつられてクスッと笑った。
「その命令は、作戦司令室が出したものよ。私じゃないもの・・。あ、でも、どの機体がその任務に都合がいいかは、私が判断するの」
「ほら、やっぱりそうだ。鬼の早瀬大尉だ」
腹が膨らんだせいで、冗談も軽く言える。
「もう!ヒドイわね・・。でもね、怖いのよ、いつも・・。もし、私の出した指示で、あなたたちに何かあったら・・、マクロスに大きな被害があったらって」

輝は小さく揺れる炎の向こうの未沙を見た。
いつも高飛車で、イライラさせる嫌なヤツだと思っていた。でも、彼女も輝たち同様に、不安や恐怖と戦っていたのだ。
「じゃあ、俺たちにいつも怒鳴られて、ムカついてた?」
輝は明るく返したが、彼女はちょっと考えたような顔になった。
「・・あの・・」
「いいよ、気にしなくて。どうせ俺たちは、バルキリーの中じゃ酸欠で、頭がいかれてるんだ。あのくらいキツク言ってくれないと、解らないよ・・」

笑いあった昼間と違って、視線を合わす事が出来ない。
はにかんで笑いながら俯いた。

ほんの少し、沈黙する。

「ねぇ一条君・・少し、立ち入った事を聞いてもいい・・?」
「なに?」
輝は顔を上げて未沙を見た。オレンジ色の火で赤らんで見える彼女の顔。
少し見ただけで、やはり見つめる事は出来なかった。

「あの・・ミンメイさんとは・・あれからずっと、恋人同士だったの・・?」
輝の胸が重く叩かれる。

ミンメイ・・あぁ、ミンメイ・・。
怖い思いをさせてしまった。かわいそうな事をした。どうか、無事であって欲しい・・。

頭を膝の上に伏せてしまった輝を見て、未沙は起き上がって座り、輝の方を見た。
「ごめんなさい・・私・・」
泣き声になっていた。

未沙の泣き声に輝は顔を上げて、静かに話し出した。
「恋人同士なんかじゃないよ・・。あの時、先輩たちと飲んでた時、俺に電話があったろ?あれがミンメイからで、その後、あれ以来、初めて会ったんだ・・。」

「・・好きだった・・?」
消え入りそうな声で、未沙がささやくように尋ねる・・。
「一方的に・・僕の方が・・」

置き火となった焚火がパチンとはじけ、オレンジ色の火花が散った。

「ミンメイさん、きっと嬉しかったと思うわ・・」
未沙は天井を向いて話し出した。輝も、ゆっくりと未沙の横顔を見つめた。
「マネージャーさんと移動する彼女を見かけたの。とても、疲れた顔をしていたわ・・。一条君が、ミンメイさんを癒そうとした気持ちは、きっと伝わってるわ・・」

未沙の言葉に、輝の胸はギュッと締まった。

今まで感じた事のない、様々な感情の波が通り過ぎる。目をきつく閉じて胸に浮かぶのは・・。

つらい思いをさせてしまった、かつての華麗な恋のお相手ではなく、触れそうな場所で、やわらかく声をかけてくれる人。

足場が悪い道で支えた細い肩。彼女はバランスをくずしてふらついて、輝の胸に背中から倒れ込んだ。胸元に当たった細い肩が震え、振り返った彼女は頬を赤くして、小さく、「ありがとう・・」と言った。

ごめん、ごめんよ、ミンメイ・・。
もう君を想い浮かべる事ができない・・。

しばらくして顔を上げると、未沙は横になり、瞼を閉じていた。眠っているように見えた。


テントを温める火を灯していよう。
彼女が、寒い思いをしないように。
今、目の前にいる大切な人の為に。

輝は小さくなりかけていた火を、守って育てるように、たき火の前に座りなおした。




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2011-11-04 : SS きぼうのひかり : コメント : 0 :
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