SS  きぼうのひかり 3


で、第3弾です。なんとか週末更新できて、うれしい・・。やっぱり、輝と未沙って書いてて楽しいです。

やっぱりここかの劇場版放浪記。どうぞよろしければ、のぞいてやってくださいませ(*^_^*)


苛立った気持ちを早瀬未沙にぶつけて、泣かせてしまった後ろめたさを、なんとか払拭するために、輝は、せめてその夜だけは、穏やかな場所を選んで野営したかった。

未沙を後席に乗せて飛行中のバルキリーから地上を見た。かつて都市だった場所はことごとく破壊され、小さな集落さえもその姿を消していた。しかし、人間の手が入っていない野山だけは、不思議と姿を留めている。ひょっとしたら、まだ生存者がいるかもしれない。輝は一瞬そう思ったが、今は一刻もはやく、休める場所を探したかった。
燃料の事を考えると、飛行場のような広い場所に、ファイター形態で着陸したかったが、この際ガウォークでの強引な着陸をしてしまう事も構わない気がした。

かつて訓練を受けた懐かしい飛行場の辺りにさしかかる。輝はバルキリーの液晶パネルの地図モードを見た。それに表示されている、そこにあった滑走路など、見る影もない。無くなったのは滑走路だけではない。必死で理論を理解しようとして、寝ないで勉強した寮も、通ったコンビニも、同期たちと行って迷惑がられたバイキングのレストランも、街そのものが、もうなにもなかった。

奥歯をキリリと噛みしめた時、突然レーダー警戒装置がけたたましくアラームを鳴らした。単一目標追尾モードで、このバルキリーが敵のレーダー波にロックされている事を知らせている。これは、敵に見つかって、ミサイルなどに狙われている事を示す。しかも、レーダー派の発信源は「地球外の兵器」と、バルキリーのレーダー警戒装置は識別していた。
「うぐっ!」
輝は全身に冷汗をふき出しながらも、とっさに回避機動を行った。一気に加速して右に旋回し、高度を上げた。全身を強く押さえつけられるような激しいGが襲い掛かる。レーダーを見たが、ミサイルが追いすがって来る様子は何も映っていない。誤報か?と思ったが、ここは離れたほうが良いに決まっている。腹に力を入れ、短く息を吐いた。Gメーターは6Gを示している。
しまった!
そう思った時は、もう遅かった。

「大尉!早瀬大尉!」
早瀬未沙の頭が不自然にうなだれている。彼女が失神してしまった事を意味していた。
「くそっ・・!」
輝は叫んだ。
「また俺か!!」


早く、早く降りる場所を探さないと・・。
輝は焦った。朝から何も食べていないから、彼女が嘔吐して窒息している可能性はほとんどない。しかし彼女に、もしもの事があったとしたら、この寂しずぎる場所で、たった一人になってしまう。
一人になる事が何よりも恐ろしい・・。未沙と漂流を始めて一週間が過ぎたが、今初めてそう思った。早瀬大尉は大丈夫だ・・。そう自分に言い聞かせながらも、彼女の無事をこの目で見るまで、不安で仕方がなかった。

半島の入り江に、海にそそぐ小さな河川がある浜が見えた。輝は旅客機にように降下角度をごく浅くとって、ゆっくりと旋回しながら高度を落とした。いつものように、360度旋回で高度を一気に落とすやり方は、彼女にさらにダメージを与えてしまう。十分に高度が下がった頃、スロットルレバーを斜めに倒し、ガウォークに変形してゆるりゆるりと着陸した。

「早瀬大尉!」
風防を開け、後席に身を乗り出して叫んだ。未沙は案の定気を失っていて、躰は弛緩しきっていていた。
「早瀬さん!」
未沙は薄い胸郭をちゃんと呼吸によって上下させている。
「・・よかった・・」
輝は抜けるような声を上げて、さっそく彼女を射出座席に固定しているハーネスを外し、狭い後席のコクピットに入り込んで、未沙の脇と背中、両ひざに腕を回して抱き上げる。弛緩した彼女の躰は、ぐにゃりと輝の両腕に収まったが、頭がカクンと上を向いて、ちょうど、輝の顔を見上げるような角度になった。

「早瀬さん・・!」
呼びかけるが、まだ目を開かない。未沙の唇は乾いてはいたが、紅く色づいていた。小さな歯の奥の彼女の口の中はしっとりと濡れていて、そこだけがやけに、つやつやして見えた。一瞬目を奪われる。このまま顔を降ろせば、この紅い唇と、そういう事だってできてしまう・・。
輝は妄想を断ち切るようにキツく目をつぶり、再び目を開けた。そして、彼女を抱いたまま、コクピットから飛び降りる事に決めた。

飛び降りる先は、やわらかそうな浜の砂場で、もし着地に失敗してもダメージは少なそうだ。コクピットの端に足をかけ、未沙を抱いたまま一気に飛び降りた。

たくさんの砂をまき散らして、なんとか着地した。バランスを保つように筋肉に力を入れて耐えたが、勢いには勝てない。未沙を抱いている重みで、前に倒れようとする勢いに打ち勝ちたかった。そのまま前に倒れると、彼女を押しつぶしてしまう。
「ぐううっ・・!」
必死に背筋を緊張させて、前方への勢いに逆らうと、反対側の後方に尻から倒れ込んだ。

寝ころんだ状態で、未沙を受け止める形になってしまった。その微妙な重さと柔らかさを感じて、輝の体は一瞬熱くなり、その自身の反応にギョッとなってしまう。

「くふ・・」
未沙が息をついた。
「早瀬大尉・・」
未沙の背中抱いて、ゆっくりと寝返りを打つように柔らかい砂浜に降ろしたその瞬間、彼女が目を開いた。
「あぁ・・ハヤセ・・」
安堵の声をあげかけた時だった。
「あっ!イヤッ!」
未沙に強く胸を押されて、そのまま輝はあっけなく突き飛ばされて、浜の砂の中に転がった。
「ちょっ・・それって・・!」
助けようとしたんじゃないか!!ムッとして未沙に文句の一つでも行ってやろうと、起き上がった輝が目にしたのは・・。

「あっ・・!」
未沙は座ったまま後ずさりした。これまで見た事も、想像した事もない、怯えた目をした早瀬未沙だった。

「ああああの!違うんです!大尉がGで失神してバルキリーから降ろしてコケて・・だから何もやましい事はありません!!」
その慌てように、ウソがない事はすぐに伝わったようだった。未沙は大きく息を吸って、顔を伏せてから小声で言った。
「ごめんなさい・・。今日はテントを張るの、手伝えないわ・・」

「大丈夫です!一人で出来ますっ」
勢いよく立ち上がって、さっそく野営用テントに使っているパラシュートを一人で張った。未沙はその中にゆるゆると入りこむと、輝に背を向けてぱたりと横になった。
なんとか毛布を掛けてあげたいが、今度こそ未沙をびっくりさせてはいけない。
輝は関節が外れるほど腕を伸ばして、遠くから未沙に毛布を掛けた。

彼女からなるべく離れて、輝も横になった。
今日はいろんな事がありすぎて、どうしようもなく頭が重かった。重い頭に浮かぶのは、恥ずかしさと、バツの悪さと、彼女の感触。
とてつもなく疲れているのに重く冴えてしまい、今夜は眠れそうになかった。

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2011-10-21 : SS きぼうのひかり : コメント : 0 :
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