SS きぼうのひかり 2

SSの続き、その2です。

やっぱりここかの劇場版放浪編。よろしければ、ワタシの妄想にお付き合いくださいませ(#^.^#)






降り立ったその場所は、かつて都市だった事すら信じられなかった。まるで、太古の荒野のように荒れきって、赤茶けた土だけが鈍く広がっていた。ここが、自分たちの祖国の首都だった、東京なのだ。弱々しく残った鉄骨が、さらに二人の胸をしめる。


輝が言いすぎに気付いた時には、早瀬未沙は動けないほど絶望しきっていて、それを輝に隠すさえ出来なくなっていた。もう、弱みを見せまいとする、未沙を支えていた虚勢さえ崩れ去ってしまっている。

いつも毅然としている早瀬大尉が、ゆっくりと力なく後ろを歩いてきたとき、訳の解らない苛立ちが輝を襲った。顔色を悪くしてしゃがみこむ未沙に、その苛立ちを暗く茶化して弱って見える未沙にぶつけた。

「やめて!・・もう、やめて・・」
その未沙の反応は、輝の胸に、罪悪感と情けなさが混じったさらに重いものとなって、ずっしりと覆いかぶさった。
元はと言えば・・。このつらい環境に早瀬未沙を引きずり込んだのは、自分だと言うのに・・。

しゃがみこんで嗚咽する未沙が、やけに小さく見える。
輝は、重い罪悪感から謝る事も出来ず、未沙から少し離れた場所で、彼女と同じように膝を抱え込んで、ぼんやり視線を泳がせているしかなかった。

辺りが薄暗くなってきた。このままだと、この場所に野営するしかなくなってしまう。
この悲しい場所から移動したほうがいい。未沙にとっても、自分にとっても。


「・・早瀬大尉・・そろそろ、ここを離れましょう・・」
輝は未沙から少し離れた場所で、しゃがんだまま話しかけた。

未沙は、顔を膝の上に伏せたまま、動かなかった。

「早瀬大尉・・」

「早瀬さん・・」
未沙がほんの少し頭を動かした。その反応を見て、輝はまた呼びかけた。

「未沙・・さん・・」

未沙が顔を上げたので、輝は少し顎を引いた。

「馴れ馴れしく呼ばないで・・」

輝はホッと安堵の溜息をついた。憎まれ口にこれほど安心するとは。
「だって返事をしてくれなかったじゃないですか。ちゃんと返事をしてくれなかったら、これかは未沙ちゃんって呼んじゃいますよ」
輝は笑ってはいたが、その笑顔は茶化したりバカにしたりしなどしていない。

「・・も、もう、なによ、それ・・」
未沙はしぶしぶ立ち上がった。
ふらつく彼女に輝は手を差し出した。一瞬、その手を掴んだが、掴んだ手のひらの熱さと包まれるような大きさに戸惑って、とっさに手を離した。

輝が心配そうに、未沙を見ている。
「ありがとう、大丈夫だから・・」
未沙はちゃんと背筋を伸ばして歩き出した。輝は背中でそんな未沙を感じながら、二人はゆっくりとバルキリーに向かった。


輝が先に前席によじ登り、射出座席のシートの部分に立って、未沙を引っ張り上げた。そして後席に座らせると、未沙のほうに身を乗り出して言った。
「ハーネスを締めます。股の間に手を入れますよ」
そして未沙の両足と腰を射出座席に固定し始めた。輝の頭が未沙の腹の辺りにあって、その両手は、未沙の下腿を一本づつ固定し、そして腰のハーネスをじんわりと締める。輝はその姿勢のまま頭をひねって、未沙を見上げた。男にそんな位置から見られた事がない未沙は、ビクンと体を震わせた。

未沙の反応を見て、輝は視線をハーネスに戻した。彼も、未沙が小さく震えた事に、小さく胸を引っかかれたような、今まで感じた事のない何かを感じて、少なからす動揺した。

「あっあの・・、腰のハーネス・・苦し過ぎないですか・・?」
「えぇ・・」

体勢を戻して、輝は未沙の顔を見た。平静を装っているが、どことなく目に力がなくて、その上、目尻がうっすらと潤っている。
大丈夫ですよ・・。などど、とても言えた義理じゃない。ただ、今自分が出来る事をしなければ。この過酷な環境を、二人でどうにか乗り越えられるように。
自分に出来る事の一つに、バルキリーを使いこなす事があるのだが・・。

「大尉は、耐Gの訓練って受けた事、ありますか?」
「ない、わ・・」
「今、耐Gスーツとかの救命装備がないですから、不測の事態があって、急に加速しないといけない場合には注意して欲しいんです」
未沙は表情をはっきりさせて輝の目を見た。
加速すると体重の何倍もの荷重、つまりGがかかってしまう。その対処法を伝えようとしていた。
「加速が始まったと感じたら、腹と下半身に力を入れて、しっかりと意識して呼吸をしてください」

でも、もし、そんな不測の事態などあったら、どうしたらいいのだろう。武装していない戦闘機が、敵に見つかったとしたら、その最大の防御は逃げ回る事なのだ。
訓練を積んでいる自分はともかく、早瀬未沙は、その過酷さに耐えられるだろうか・・。

少し緊張した顔で、未沙は頷いた。そんな未沙を見て、輝はふうと息をつくように笑う。未沙がしっかりしてくれるのは、彼にとっても心強い。

輝は離陸前のチェックをしながら考えていた。
あの時。
ミンメイと一緒に宇宙に飛び出したとき、このバルキリーが武装していない事に気が付かなかった。自分にそんな不注意があったなど、思いたくなかった。同じことを他人がやってしまったら、当然良くは思わないだろうに。

浮かれすぎた自分を思うと、ただただ情けなく、そして、最後に見たミンメイの顔が頭をよぎって、よじれるほどに苦しかった。

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2011-10-14 : SS きぼうのひかり : コメント : 0 :
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