SS ファイターパイロット 番外編2

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もう、妄想のみのSSなんですが、輝パパ妄想は、かなり前からしてたんで、こうやって形にできてうれしいです。
ヒカミサじゃないので、ちと、もの足りないかもしれませんが・・。

輝に関わっていた人たちのSSって・・事で^_^;未沙も、輝の人生に舞い降りた一人の女性ってことで・・。

ぼつぼつ、ヒカミサをがっつり行きたいなぁ・・。


少し長いので、お暇なときにでも・・よろしければ、お付き合いくださいませ


輝と出会ったのは、一条家に着いてすぐだった。

鉄雄の息子、一条輝。
輝の母親は、輝を産んで間もなく亡くなった事は、ついさっき鉄雄に空港まで迎えにきてもらった車の中で聞いた。ロイ・フォッカーは母親を知らない子はどんなものかと、少し緊張して一条家に降り立った。
「おーい輝、帰ったぞ~、なんだ、あいつ寝てるのか?」
いつも犬コロみたいに飛び出してくる輝が出てこないので、鉄雄は様子を見に家に入った。
外で待つロイ・フォッカーの背中に、一筋の水が勢いよくかかった。
「なんだ?水?」
振り返ると、黄色で透明なプラスチックのピストルを持った少年が、さっと物陰に隠れるのが見えた。
「お前が輝か?俺はロイ・フォッカーだ。仲良くしようぜ」
そう挨拶してやると今度は足元に、同じ黄色く透明なピストルが転がってきた。拾い上げると、それにはたっぷり水が入っていて、トリガーを引くと細い水が飛び出す仕組みになっていた。
シューッっと音をたてて、今度は足元を狙われた。
「おっと、そこだな?!」
撃ってきた先に撃ちかえす。満面の笑みの6歳の輝が躍り出て、今度はフォッカーの顔を狙った。
「うわっ!こいつ!」
輝がワゴン車の陰に回り込んだので、それを囲んで激しい銃撃戦になった。
「このヤロ!待てって!」
フォッカーも本気の怒鳴り声だ。怒鳴り声がいつしか笑い声に変わって夕暮れの空に響き渡った。
「あ~あぁ、お前らなにやってるんだ・・」
銃撃戦は、家から出てきた鉄雄の呆れ顔にも目もくれず、とうとうピストルの水がなくなるまで続いた。

その日は輝の部屋に布団をひいて一緒に眠った。輝はひとしきり好きな飛行機について喋ってから、スイッチが切れるように眠った。
小さい子供と接する機会がなかったロイ・フォッカーだか、輝となら子供相手のおかしな緊張感なく過ごせると、初めてあったこの時にそう思った。


翌日、農薬散布を一瞬でもつまらないと思った事を、ロイ・フォッカーはさっそく後悔した。彼が、唯一「とんでもない凄腕パイロット」として認めた一条鉄雄は、請負の仕事で農薬散布中だった。専用の機体は当然プロペラ機で、翼の辺りにあるチューブから、白く煙のように見える農薬を散布している。

鉄雄の農薬散布は、まるで曲技飛行だ。目的地を目指して一気に高度を落とし、超低空飛行で農地の上を飛び、旋回してまた繰り返す。散布される農薬は、まるでアクロバット飛行のスモークのようだ。それは風向きを考慮され、確実に農地に届いているし、しかも民家に農薬をかける事のないように計算されている。
農地が見渡せる小高い公園の駐車場にとめられたワゴン車のなかで、ロイ・フォッカーは唸るしかなかった。

「すげーな・・俺の目に間違いはなかった・・」
そうつぶやく彼に、それまでフロントガラスに張り付いて外を見ていた小さな体が振り返った。
「うん、父ちゃん凄いでしょ!」
「おう、輝。俺はお前がうらやましいぜ」
「えへへ・・」
輝は嬉しそうに笑って鼻を掻いた。
ロイ・フォッカーはイヒヒと笑い返したが、ふーっとため息をついた。
「なー輝、窓開けようぜ~・・」
農薬散布は夏の真っ盛りに行われている。車でその様子を見ている二人は、もう汗だくだ。おまけにクーラーのガスが切れていて、暑い事このうえない。
「ダメだよ。だって父ちゃんが農薬撒いてる時は、窓を開けるなって言ってたもん」
「風上だから大丈夫だ。それに、窓が開いてても親父さんからは見えないぞ」
「ダメ!だって父ちゃんがウソをついちゃダメだって、いつも言ってるもん!」
確かに鉄雄は、「教育方針は、挨拶しろ、ウソをつくなだ」と言ってはいたが・・。これでは熱中症になってしまう。
「強情なヤツだ!うりゃ!!」
小さな輝の脇腹を思いっきりくすぐった。
「うわ!くすぐったい!」
輝は座席に転がってゲラゲラ笑った隙に、窓を開けて車を発進させた。
農薬散布を終えた鉄雄の小型飛行機は、公園から出る二人を乗せたワゴン車を見守るように、その真上を通過して飛び去った。

「先輩!反則だ!」
「黙れ!もう農薬散布は終了だ!」
「あ、そっか・・」

強情だが素直な輝が本当に面白い。そして、少し気になる事を聞いてみた。
「なぁ、なんで俺が先輩なんだ?」
助手席から身を乗り出すようにし、輝は大きな瞳をさらに大きくして、ロイ・フォッカーの質問に答えた。
「だって、ぼくもパイロットになるから。だから、ロイさんは先輩なんだ」
「よし、じゃあ早くパイロットになれよ。そして、俺と親父さんとお前で、3人でアクロやろうぜ」
「うん!やったーーー!」
輝は両手を上げてバンザイし、もっともっと瞳をきらきらさせた。



3人でアクロをやろう。

そんな夢が実現するかもしれない。輝が大きくなるにしたがって、ロイ・フォッカーはそう思うようになった。
請負仕事で借りた複座のプロペラ機に、13歳になった輝を乗せて飛んだ事があった。離陸と着陸はロイ・フォッカーが操縦して、安定した場所で輝に操縦桿を握らせてみた。輝は理屈抜きで飛行機を動かす術を知っている。感覚で行きたい方向に動かす事が出来て、しかも機首を視線の方向にきっちり合わせる事ができた。
大声でロイ・フォッカーは輝に話しかけた。
「お前、昔俺が3人でアクロをやろうって言った事、覚えてるか!?」
「覚えてるよ!今もそのつもり」
「よし、頼もしいな」
「ねぇ!先輩」
マイクの感度が極端に悪いうえに、エンジン音がコクピットにダイレクトに響いてくる。輝は大きな声で兄貴分に呼びかけた。
「先輩、ボクがパイロットになるまで、ここにいてくれるんですよね!?」
「あぁ、出てけって言われても居てやるよ!」
「じゃあ、もっと勉強して、部活でも走り込みして、頑張りますよ!」
「ほどほどにしろ!俺より賢くなられたら困っちまうぜ!」
「なんすか???聞こえませーーン!!」
立派とは言い難い、古いプロペラ機だったが、そのエンジン音は二人強い絆のBGMのようだ。

一条家の居候として日本に来てからもうずいぶん長い時間が過ぎた。この長い間に、輝の祖母が亡くなったり、鉄雄のアクロチームの資金繰りが極端に悪くなったりしたが、なんとか乗り越えてきた。
ロイ・フォッカーが鉄雄と組んで飛ぶ課目は、スリリングで客を今まで以上に楽しませ、航空ショー以外にもイベントの開会式などの依頼が少しずつ増えていった。
輝も航空ショーの時の地上ブースでグッズ販売を手伝ったりした。嫌いだと言い放っていたジェット戦闘機が飛ぶのを、横目でチラチラと見ながら・・。

平凡で平和な日々は、それを失いそうになった時に初めて幸せだったと感じるものらしい。

世の中に不穏な空気が流れだした。1999年に南アタリア島に墜落した巨大な宇宙船。あまりに衝撃的なその出来事に、人類は統合して対処すべきだという議論が生まれた。まさに、地球全体が統一への流れに向かいだしたと同時に、それに反対する勢力も生まれる。

その反対勢力が武力による抗争をしかけてきたのだ。

一番に攻撃されたのは、ロイ・フォッカーの母国だった。その国を象徴する高層ビルに、ハイジャックされた旅客機が突っ込んだのだ。
何千人もの命が失われ、世界中が悲しみに包まれた。
それからロイ・フォッカーは、時々黙って何かを考えているように見えた。


秋も深まって肌寒い日が続くようになった季節の静かな夜に、ロイ・フォッカーはついに決断した事を伝えるために、鉄雄の部屋をノックした。

背を丸めてパソコンでネット上のニュースを見ていた鉄雄は、ロイ・フォッカーを本でいっぱいになっている狭いソファーに座らせてから、台所に飲み物を取りに行った。鉄雄の見ていたニュースには、宇宙船から得られたテクノロジーを使った、新型戦闘機の開発についての特集記事が書かれていた。

鉄雄は、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを、ロイ・フォッカーに手渡し、自身もそれを口に含んだ。
本棚にもたれてロイ・フォッカーの「軍隊に入る。そして戦闘機乗りになって、人々を守るために働きたい」そんな彼の決断を聞いた鉄雄は、さほど驚いたふうでもなく淡々と言った。

「俺たちの時代は、まだよかったさ。精鋭であれば抑止力になると信じて、抜かずの剣を誇りに思っていた。今は、まず剣を抜かなければ自分も国も守れないのかもしれない」
「親父さん、俺はただ戦闘機乗りになりたい訳じゃないんだ。親父さんも言ったように、今は・・」
「なぁ、ロイ・・。」
常に楽天的で明るい鉄雄が、深く沈むように話すのを聞いて、ロイ・フォッカーは息を飲んだ。
「空戦ってのは、一種の麻薬でな・・。それが骨身に染みると、もう他に何をやっても生きている実感が得られない・・。今の俺がそうだ」
元戦闘機乗りの鉄雄の言葉を、ロイ・フォッカーは黙って聞くしかなかった。

「俺が、こうしていられるのも、妻や・・お前や輝がいたからだ。」
「親父さん・・」
鉄雄はロイ・フォッカーの青い目をじっと見て言った。
「生きて帰ってこいよ。輝もいずれはパワーのあるジェット機に行きたいと言い出すだろう。でも、ヤツは大丈夫だ。輝には、手に入れたくてたまらないものがある。それを手に入れるまで、そして手に入れてからも、それを守ろうとして、必死で帰ってくるだろう。しかし、お前は違うぞ・・。」
「何が・・違うと言うんですか・・」
掠れた声で言った。

「一緒に飛んでいるとよく解る。お前は、どこか命を投げている。そんな奴がファイターパイロットになると、それこそいい自爆テロだ」
ロイ・フォッカーは、小さく眉を上げて、目を細めた。
何があったかは、知らんがな・・そう言って鉄雄は再びペットボトルの水を飲んだ。

「死にはしない。戦争が終わったら、必ず帰ってきて、今度は輝と3人で・・」
「ロイよ・・そんな約束は、今しないほうがいい」
二人の間に、重い空気が流れた。
「空戦の機動が始まれば、地上では考えもつかない動きができる。そうやって、ファイターに魅了されてしまう。もう、死んでもかまわないと思うくらいにな。アクロなど、やってる時間が惜しくなるぜ・・」

鉄雄はそれほどまでに、魂の一部になっていたファイターパイロットとしての人生を、愛する人を助ける為に捨てたのだ。しかし、その想いと祈りは届かずに、愛する人は輝を産んで、天国に旅立った。
今まで語られなかった、鉄雄自身の魂の言葉に、ロイ・フォッカーは黙るしかなかった。

沈黙を破ったのは鉄雄のほうだった。
「いいか、情熱と闘志を持って、常にリラックスしろ。俺からの餞別の言葉だ」
鉄雄はロイ・フォッカーの前に立って右手を差し出した。
「今まで楽しかったな」
「親父さんから教えてもらった事は、忘れない」
差し出された手を握りかえそうとした時、開いたドアの向こうに立つ輝に気が付いた。

輝は目に涙をいっぱいに溜めて、絞るように言った。
「・・先輩は、オレがパイロットになるまでここに居るって言ったじゃないか・・」
「よせ、輝。ロイが決めたことだ」
輝はロイ・フォッカーに近づいて、その厚い胸ぐらに、一発拳を食らわした。
「オレは・・うそつきは嫌いだ!」
そう言って、大粒の涙をボロボロ流し、肩を震わせて泣いた。その肩を抱いてロイ・フォッカーは輝に話しかけた。
「すまん、輝・・。でも、戦争が終わったら必ず帰ってくる。ここは俺にとっても家なんだから」
輝は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「男ばっかりで、つまらんがな」
ニタリと笑うロイ・フォッカーを見て、鉄雄は吹きだして笑った。それにつられて輝も、ロイ・フォッカーも笑い出した。

その日、彼は初めてこの家に来たときと同じように、輝の部屋に布団をひいて寝た。
ぼそぼそ喋っては笑って、そのうちに二人は眠りに落ちた。



「すまんな、空港まで送ってやれれば良かったんだが・・」
特急電車が停車する大きな駅まで、鉄雄は彼を見送りに来ていた。ロイ・フォッカーの荷物は、やはり小さなボストンバック一つだった。
「輝によろしく言っておいてください」
「あぁ。・・あいつ、どっかで見てるんだろうけどな」
二人は辺りを見回したが、輝の姿はなかった。

駅のホームで鉄雄に向き直ったロイ・フォッカーは、右手を差し出して、二人は固く握手を交わした。
「じゃあ、親父さん・・、元気で」
「お前もな」
電車に乗り込んで、もう一度軽く笑う鉄雄を見たが、その姿は電車の発車と共に、一気に後方へと流れて行ってしまった。
自分にとってかけがえのない家族は、もうとっくに、あの一条親子なのだと思えた。

ハネダに着くと、すぐ搭乗の手続きをし、少し早いが出発ロビーの入り口に向かった。
あの時、この場所で自分のパイロットとしての人生が始まった。そして、これから新しい局面にはいるのだ。そんな事を考えていると、出発ロビーの入り口に、輝が呆然と立っているのを見つけた。

「輝!」
呼びかけると、はっと顔を上げて輝はゆっくりと歩み寄って、身長の高いロイ・フォッカーを見上げた。
「先輩、オレ、先輩の事を、うそつきとか言って、ごめん・・それが言いたかったんだ」
「なんだ、もう忘れてたよ・・。お前こそ、自分にウソはついちゃ駄目だぜ」
何が?と言うように、輝は眉を寄せた。
「親父さんのプロペラ機より、ジェット戦闘機が好きなんだろ。親父さんはそんな料簡の狭い人間じゃないぜ」
ニッとわらう兄貴分の笑顔に、輝は小さく「うん・・」と頷いた。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。ちゃんと勉強しろよ!」
変わらない大きな声でそう言って、ロイ・フォッカーは出発ロビーに入った。
輝の視線を背中に感じていたが、振り返らなかった。
目が潤んでいるのを、弟に見られたくなかった。

今度会う時には、もっと強い兄貴になって帰って来てやるさ。

ロイ・フォッカーの目には、自分の進む道がくっきりと見える気がした。
鉄雄から熱い魂を引き継いだ自分が。そして、高く、速く、最強と呼ばれる自分の姿が。





番外編 おわり

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2011-09-30 : SS ファイターパイロット 番外編 : コメント : 4 :
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Re: No title
このお話は、結構気に入っているので嬉しいです!ありがとうございます!
2016-07-11 21:05 : michy URL : 編集
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2016-07-08 23:44 : : 編集
Re: No title
びえりさん
おおおおお・・ありがとうございます・・このシリーズにコメントをいただくのがもう嬉しくて(T_T)
1話とこの番外編が一番気に入っているので、そう言っていただけると嬉しいです
輝パパも妄想ポイントなんですよね・・

2015-07-18 20:16 : michy URL : 編集
No title
これ公式ストーリーにして貰ってもいいですよね…
普通にマクロス雑誌の付録とかに掲載されて欲しい…
2015-07-17 21:35 : びえり  URL : 編集
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