SS ファイターパイロット 番外編 1

ううっ・・今・・めちゃくちゃ忙しいんです・・。こんな事で遊んでいることがバレたら、ヤバイ。
でもでも、気分転換も必要ですよね!!

と言うわけで。純愛ものを・・といっておきながら、純愛から遠く離れた妄想です。
止まらなくなってしまいまして・・。

よろしければ、お付き合いください。
完全オリジナル設定。
輝パパ「一条鉄雄」とフォッカー先輩です。
オリジナルが苦手な方は避けてくださいね。

で、これ、続きます・・。





暑い夏は嫌いじゃない。嫌いどころか夏は大好きだ。でも、この仕事で食いつなぐようになってからは、暑い夏が恨めしく感じる。

中古のワゴン車から降りたった一条鉄雄はギラギラ照りつける太陽を直視するのを避けて、ハネダ空港の空を見上げた。
上空の気流を雲の流れから推察する。地上は穏やかだか、高い所では吹いている。この様子では、お客は喜ぶだろうが、空の上でアクロバットをする自分は冷や汗もんだ。
とはいえ、この暑さのなかで、どこの誰が顔を空に向けてアクロを観るというのか。それに、暑い空気の中ではエンジンの出力を上げなくてはいけない。その分、燃料費もかさむ。
次々と着陸と離陸を繰り返す大型旅客機を目にすると、あれを飛ばす人種と自分との共通点と違いは何か?と、どうでもいい事を考えてしまう。おそらく、少年の日に、空に憧れた事だけは同じなのだろうが。


「しかし・・もの好きな奴もいるもんだ・・」
ハネダ空港の到着ロビーに向かいながら、今日やってくるヤツとの経緯が思い出された。
三年ほど前だった。背が高く体格もいい少年が「一緒に働きたい!」と言っては借りている格納庫に入り浸るようになった。しかも、少年は外国人だった。何度も何度も追い払っている内に、不覚にも彼のしぶとさと明るさが気に入るようになっていた。しかし、今は人を雇う余裕などない。突き放すつもりで「そんなにここに来たいのなら、飛行機免許を取ってから来るんだな」と言ってやった。しばらく見ないと思っていたら、なんとその一年後に、れっきとしたパイロットになって表れたのだ。

少年の名は「ロイ・フォッカー」と言った。彼が飛行機免許をとった学校は、彼の母国では有名な航空学校で、入学金や授業料もべらぼうに高額だ。
「金は親に出してもらったのか?」と聞くと、ロイ・フォッカーはニヤリと笑って、「なんでも使えるものは使います」と言ってのけた。

とうとう根負けしそうになったが、最後に
「来てもいいが、給料は小遣い程度だ。そのかわり、衣食住は俺の家で面倒見るってのはどうだ。言っとくが、お前の実家の犬小屋程度の広さだぜ」
と吹っかけてみた。
「じゃあ、いつ行けばいいですか?」



転がり込んでくるヤツにこんなにいい待遇はないだろう、と思いつつも空港の到着ロビーで彼を待った。鉄雄はロイ・フォッカーにいったん帰国することを勧め、今日は彼が正式に一条家の居候として来日する日だった。
鉄雄が帰国を勧めた理由は一つだ。
「親は自分の子供の事は、どんなに出来の悪いヤツでも気になるもんだ。ここに来ることを、ちゃんと親に話してから来い」
そんな風に思えるようになったのも、鉄雄自身が親になってからだった。

ロイ・フォッカーは小さめのボストンバック一つを持って、到着ロビーに現れた。褐色がかった金髪と、高い身長。立派に見える骨格だが、まだ肩や腰の辺りに少年らしい頼りなさが漂っている。
「よく来たな。ママに泣きつかれて来ないかと思ってたぜ」
「来ないかもしれない相手を、こんな所まで迎えに来れるあなたも凄い人だ」
鉄雄は軽く笑って、ついてこいと背中を見せた。

鉄雄が運転する中古のワゴン車は、もうとっくに地球を一周している走行距離だが、この国のトップメーカーの車だけあって、高速道路を難なく突っ走った。
それまで無駄話をして笑ってばかりいたロイ・フォッカーが、ふいに真面目な顔をして鉄雄に話しかけた。
「少し聞いていいですか」
「どうぞ」
鉄雄は真面目な空気を茶化すように語尾を上げて返事をした。
「あなたの事は、おおかた調べる事が出来ました。元戦闘機乗りで、同盟国との模擬戦でも、最新鋭の相手を次々に撃墜して負けた事がない」
「ははっ公務員ってのは気楽なもんでね。機体にどれだけダメージを与えても、税金で修理してもらえる。だから大胆な事が出来たってだけさ」
「この国の空軍の仮想敵部隊の隊長に誘われていたのに、どうして民間でアクロをやろうと思ったのですか」

鉄雄はしばし黙ったが、ポンポンとハンドルを叩きながら言った。
「まぁ、家庭の事情というやつさ。単純に言えば、金が欲しかった。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの外国のIT企業が、その企業の宣伝として専属アクロチームを作ると言い出してな。契約金欲しさに、その誘いに乗ったのさ。知っての通り、その後は不景気でアクロチームは解散。退職金代わりに、アクロに使っていた機体は頂いたって訳さ」

ロイ・フォッカーはじっと鉄雄を見た。理由はそれだけではないはずだ。真っ直ぐな青い目は、あっさりと鉄雄を射抜いてしまった。やれやれと溜息をついた。

「まぁ、本当の理由は、さらに個人的なものだ」
金が必要だった。
「俺は結婚などしない」と豪語していた彼が、30代の後半に恋をしたのは、まだ20代の明るい髪をした女性だった。そして、お互いの想いを確かめ合うのには、さほど時間はかからなかった。周りが二人の結婚に反対した理由は、年の差と、彼女が生まれながらに持っていた、心臓の障害のためだった。

「妻を助けたかった。妻の病気を治すには、外国で治療を受けるしかなかった。そのために金が必要だった」
「たしか、奥さんは・・」
「息子を産んでから・・ね」
表情を変えることなく、ハンドルを握る鉄雄を見て、ロイ・フォッカーの方が辛い気分になってしまった。思った事をなんでも言う悪い癖が、鉄雄に辛い過去を思い出させてしまったかもしれない。

そんな空気を破るように鉄雄は言った。
「しかし、この後すぐアクロの訓練に入れると思うなよ。今の季節は、測量のためのフライトや、農薬散布が主な仕事だ」
「えぇ・・」
がっかりしたようにつぶやくロイ・フォッカーを横目に見て言った。
「いいか、だからといって、なめてかかってはだめだ。1秒2秒の遅れや進みを認識出来ずに飛ぶやつは、飛行機乗りとしては3流だ。たとえそれが、農薬の散布だとしてもだ」
さっと顔を上げるロイ・フォッカーを見て、鉄雄は口角を上げた。

「お前はいいパイロットになりそうだな」

目的の一条家に着くには、まだまだ高速道路を突っ走る必要があった。

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2011-09-23 : SS ファイターパイロット 番外編 : コメント : 0 :
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