SS ファイターパイロット 10

1話は古い記事になってますので、下にあります。スクロールして一番下の記事からお読みください。
一番下に1話が無い時は、「次ページへ」をクリックしてください。





はい・・。引っ越しが終わり、書きかけの続きをやっと書きました・・。
一体・・誰が喜んでくれるのか・・でも、拍手くださっている方もいらっしゃるし・・。と、ややマイナス思考ですが、自分的に妄想も書くのも楽しかったです。

ではでは、愛覚ぼ設定、輝はもともと軍人につき、訓練生時代があったのでは妄想・・です。
よろしければ、お付き合いくださいませ




「お前はバカを突き抜けたアホでアホを超えたバカだ」

事の顛末を正直に話した輝は、柿崎に真顔でそう言われた。
「なんだよ、いくらなんでもそこまで言うなんてヒドイじゃないか」
思わず言い返したものの、柿崎の呆れ顔はさらに強度なものになった。
「据え膳じゃないか。それをお前・・吐いた上に介抱されて朝飯食って、おまけに汚れたシーツの後始末までして、なに事もなしで送られて・・ああ~草食過ぎて理解不能だ・・」

「うるさいなぁ・・どうでもいいじゃないか」
この年でそっちの欲望が無いわけねーだろ!あの情けな過ぎる状況で野獣になれるなんて、フォッカー先輩くらいなもんだ・・と言いたかったが・・。結局言い返せずに墜落した。

好きな女ならともかく・・。
ふと、父の事がうかんだ。いくら祖母に「輝のために」と言われても再婚しなかった理由は、やはり死んだ母を愛していたからなのだろうか・・。

「それにお前、その服はお前のじゃないだろ。なんで女の一人暮らしの部屋に男物のシャツがあるんだ。そういう女に遠慮は要らないんだよ」
反論したかった。彼女は確かに「そういう女」なのかもしれいけど・・。やっぱり上手く言えない輝はだんまりを決め込んで、ふて寝するしか出来なかった。

柿崎になんか、絶対解らないさ・・。
後頭部で手のひらを組んで、両肘で頭をはさんだ。
あの細くやわらかい手で調子の悪い自分の背をさすってくれる暖かさを。食べこぼしを「汚い」と言われない安堵感を。

拗ねたように寝る輝の背中を見て、柿崎は息をつくように言った。
「お前、まさかあの女に惚れたんじゃないだろうな・・。やめとけって言いたいけどな・・」
そう言って椅子の背もたれをグッと反らせて全身をギーツと伸ばした。
「まっ、俺もナナちゃんに逃げられてさ。お互い良いとこなかったよな」

輝は柿崎の言葉をじっと背中で聞いた。
惚れたとか、そういうのなんだろうか・・。解らなくなって目を閉じた。

エミに母性のようなものを感じたのかもしれないが、まだそれを意識できるほど、人と人の感情にもまれたわけでもなく、胸を掴まれて投げ落とされるような恋を経験しているわけでもなかった。



休日が終わって、また変わらない厳しい日々が始まった。
ほんの少し変わった事があった。昼食を売店で買って、例の彼女、エミと一緒に食べるようになった。きっかけは、輝がエミに貸してもらったシャツを返しに行った時、ランチボックスを差し出して「食べませんか?」と言った事だった。

基地の裏手にあるバスケットコートの見えるベンチで、ぼんやりと二人でランチボックスを広げた。もう何日もこんな昼食を過ごしていて、柿崎からは余計な事を聞かされた。
「日本からの有望株を、あの女が落としたって事になってるぜ」
所詮噂だし、やましい事も(してないのだから・・)何もないし聞き流す事にした。

「ヒカルが乗る飛行機って、どれかに決まってるの?何号機とかって」
「なんで?」
「見つけたら、がんばれーって、思えるでしょ」
「・・日によって違うから解らないよ・・」
「へぇ・・そうなんだ・・、決まってるんだと思った」
「俺たちも機体もローテーションがあるからね」
お互いに笑いもしなければ、見つめる事もない。少ない会話なのに、ひどく穏やかだった。
エミはやっと輝の日に焼けた横顔を見た。
「ねぇ、なんで私とランチしたいって思ったの?」
「・・さぁ・・、なんでかな・・」
軽く頭を掻く輝をみて、エミはプッと笑った。
「面白いね、ヒカルって・・。でもね、私もうすぐここを辞める事になると思うの」
「そうなの?」
輝もエミの顔を見た。
「うん、いろいろケジメをつけたほうが良いと思って」
「ケジメ・・いい男が見つからなかった?」
エミは少し黙ってから輝を見てニヤッと笑った。
「それも、ある」

「ふーん・・」
そのまま空を仰いだ。見上げる空は、抜けるように青い。
「今日飛ばすのは、80-10365号機。機体には365って書いてある」
「じゃあ見つけたら、応援するね」
そう言ってエミのほうが先に立ち上がり、輝もあとに続いた。
今日はどこかで彼女が見ててくれるのかな・・。そう思ったが、背中を見せるエミの姿を見て軽く頭を振った。


VF-1「ファイター」の課程も大詰めになってきている。次に続く、ガウォークやバトロイドの課程も待っているが、まだそれに想いを馳せる事が出来るほど甘くはない。

VF-1Dバルキリー365号機は、午後からの課目をこなすため、訓練空域に向かっている。
そのコクピットにいる輝は、いつものように瞳を黒々と輝かせながら思った。

やっぱり、空の上はいい。空の上にいる時は、よく解らないことに、モヤモヤしなくていい。体と五感と知識を使って、全身で到達する世界だ。それが、このVF-1でなければ到達できない超音速の世界なら、なおいい。パワーもスピードも桁違いだ。はやく邪魔な教官を後席から降ろして、自分ひとりで思うまま、3次元の動きでエネルギーを感じて、このパワーの塊を思うままに操ってみたい。

「おい何をやっているんだ、聞こえないのか?!」
後席のガードナー教官が怒鳴り声で言った。この冷静で分析好きの教官がこんなに声を荒げるのはめずらしい。
「はいっ聞こえていますっ」
「聞こえていたらなぜ言われた通りにやらないんだ!」
うざったいヤツだ。やってるじゃないか。
「はいっ」
ここで反論するのはめんどくさい。後で記録を見れば、自分がちゃんと教官の指示通りの機動を行っていたことなど、すぐに解る。

課目を終えて基地上空に向かった。しかし、今日はこれで終わりではない。着陸の前にタッチアンドゴーの訓練があるのだ。タッチアンドゴーは、空港に着陸しようとするように、主輪を一旦滑走路に着いてから、再び出力を上げて、また飛び立つ機動だ。水平尾翼のないVF-1は、今までの航空機と違う操作がある。だから、かなり訓練が進んだ時点でも、こうやって操作と機動を確認する必要があった。

管制塔からタッチアンドゴーの許可が下りて、着陸体勢に入った。そのまま滑走路に降りて、主輪をタッチさせ出力を上げた。輝のVF-1は空気を裂くように上昇した。
軽く息をついた輝に、後席のガードナー教官が信じられない事を言った。

「君は今、危険操縦をした。操縦を変われ」
「ええっ!いつですか?!」
「解らないのか、操縦を変われ」
腑に落ちない。いったい自分の操縦に、どんな危険な行為があったというのか?
「嫌です!」
「操縦を変われ!」
怒鳴るように言うガードナー教官につられた訳ではないが、輝の声も荒くなった。
「危険操縦などしていません!このまま続けます!」
操縦桿を動かしてみたが、機体がピクリともしない。前面の液晶パネルに、操縦権が後席にあることを示したメッセージが表示された。
輝は両方の拳で自分の太腿を殴った。


納得がいかなかった。
自習室で両腕をさすりながら輝はイライラしていた。なぜ操縦権を取られるまでの事になったのか、結局教えられなかった。運行メモリーまで取り上げられて検証も出来やしない。その上、逆らった制裁なのか「腕立て伏せ100回」までさせられて・・。さらに「顎が着いていない」という理由で、何回もゼロ回からの再スタートとなり、100回どころではなかった。

「畜生・・他にやばかった事なんていっぱいあるのに、なんでタッチアンドゴーなんかで・・」
パソコンのキーボードを叩く指先に、露骨に苛立ちが籠った。
「まぁそうイライラするな・・。人生にはいろんな事があるもんだからよ・・」
「そうとも、お前は若くて腕もいいから、これからたくさん楽しい事がある」
なだめようとする柿崎や、同じグループの訓練生のしたり顔にが、ますます腑に落ちない。
「あのさ、俺は問題がなかったはずの機動について文句つけられた事に怒ってるんだ。なんでそこに人生が関係あるんだよ」

「おっと、お前にしちゃ鋭いじゃないか」
柿崎は両手を組んでヘラヘラと笑った。
「なんだよ、その笑い方?!」
「お前のランチタイムの彼女だよ~、俺も最近気が付いたんだけどな~、彼女、ガードナー教官の女らしいぜ」

その瞬間、完全に頭に血が上ったかと思った。怒りのあまり視界が一気に狭くなった。
「しかしやるよな~あのエリート教官も・・たしか、ガードナー教官には、金髪美女の奥さんと娘さんがいただろ。あの奥さんには歓迎会の時、思わず声かけそうになったなぁ~妊娠中であんなにきれいなんて・・犯罪だよな~・・」

最後まで聞いていられず椅子を蹴った。
「おい待て!お前どこに行くつもりだよ!」
柿崎は自習室を出て歩く輝の腕を後ろから掴んだ。
「部屋に帰るんだよ!」
掴まれた手を勢いよく振り払った。いつもどこか冷めている輝の目が、今は力が籠って黒く光っている。
「バカ!嘘つけ、教官のところに行くつもりなんだろ!?からかった俺が悪かった。奴がいくらただの女たらしだとしても、教官には変わりないんだ。下手すりゃ営倉入りくらいでは済まないぞ!」
「・・関係ないって!」
「頭冷やせよ!」
そのまま腕を振り払って歩き出す。柿崎の声など、もう聞こえなかった。

ガードナー教官がみんなの憶測するように、ただ自分の彼女とランチタイムを取る俺にムカついて、あんな訳の解らない指導をしたのなら・・、一分一秒でも長く操縦桿を握って、早く強くなりたい俺の時間を無駄にしたのなら、このまま泣き寝入りなんて出来るもんか!教官だからこそ許せない!

それに・・

妊娠中の奥さんがいるのに、なんでエミさんなんだ・・!エミさんは、解っててヤツと付き合ってるのか?

ガードナー教官の居室のが視界に入ってきた。ドアノブを握ろうと手を差し出したとき、勢いよくドアが開いて、逃げようがなかった輝の額に直撃した。
「いてっ!」
大きな音がして、輝は後ろに尻もちをついてすっ転び、中から飛び出してきた人が尻もちをついている輝につまずいて「きゃっ」と声を上げて覆いかぶさるように倒れこんだ。

「・・エミさん」
「ヒカル・・」
輝に覆いかぶさったまま、エミは目を伏せて唇をきつく結んだ。
エミの下になったままで輝は言った。
「ヤツは中に居るんだろ・・。出ても来ないじゃないか、あんなに派手な音がしたのに・・」
輝は自分の苛立ちをぶつけるように言うと、エミは顔を上げて涙でぬれたキツイ目を輝に向けて言った。

「あんたには、関係ない」

立ち上がる時に、彼女の頬に新しい涙が流れたように見えたのは、気のせいだろうか。
輝はじっと同じ場所に座って、自分の心に出来てしまった重いものを感じるしかなかった。


それから、輝は昼食を、食堂で一人食べるようになった。
いつも輝をからかって遊んでいる柿崎も、何も言わず、ちゃんと離れて食事をとってくれていた。


あれから数日たった今日は、夜間訓練のある日だった。朝から3度目のフライトで、疲れているせいもあるのか、どうも上手くイメージトレーニングが出来ない。それがあの泣き顔のせいとは思いたくないけれど。
得意とは言えない夜間の計器飛行だけに、ここはきっちりイメトレをやってから挑みたい。

ざわつく休憩室を出て、静かで集中できる場所。エミと一緒にランチタイムを過ごしたベンチに行った。
ベンチに座って目をつむって、両手両足を前に投げ出す。当然、右手は操縦桿、左手はスロットルレバー、両足にはフットペダル。
夜景と星空のはざまで、まさに3次元の機動をとれば、もう自分がどこにいるか、解らなくなる。そこで計器を意識し、自分の位置をいつも確認する。それはもう、生きるための知恵にも似て・・今の自分は、どの辺りにいるのだろう・・。

ダメだ・・やっぱり雑念が・・。

そう思った時、後頭部をツンと突かれた。
振り向くと、例の彼女が立っていた。

「なんとなく来てみたんだ~、今日が最後だから」
エミは輝の横に座った。
「この前はごめんね、びっくりさせたみたいで」
「いや・・あの・・」
少しおどおどして見える輝に、少し微笑んだ。
「あの人とはね、結構長い付き合いなのよ。奥さんとは別居中だって言ってたし。でも、おかしいでしょ、別居して離婚もするって言うのに、なんで赤ちゃんができるのかな~って」
「・・そう、なんだ・・」
余計な事を言って、また彼女を泣かせてしまっては・・と思うと、気のきいた台詞なんて出てくるはずもない。
黙る輝を見て、エミは笑った。
「それで、同じ思いをさせたくて、いっぱい浮気してみたけど、なんの効果もなかったのに・・。ヒカルを相手にした時だけ、効果があってね」
輝は顔を上げた。
「なんで?何にもなかったじゃないか。俺、意味わかんないよ」
エミは、さっと風が吹くように笑った。

「あぁ、ヒカルにプレゼントがあるの、結構笑っちゃうよ」
差し出されたのは一枚のCDだった。手に取ってタイトルを見てみると・・。
「・・えっ 私の彼はパイロット・・」
「ね、笑えるでしょ」
「まぁ、笑えるかな・・」
輝はもう一度、手にしたCDを見た。

「じゃあ、私いくね」
ベンチから立ち上がったエミを見上げた。もう、きっぱりと迷いがないように見える。
「これからどうするの?」
「仕事、探す」

「そうか・・女の人は強いから、きっと大丈夫だよ」
迷いの見えないエミに、輝も柔らかく笑った。
「ありがとう・・。嬉しかった。ランチ一緒に食べてくれたり、色々と・・。辛い時だったし。なんか、ヒカルといると素直になっちゃう感じなんだよね・・。でも、悪い女には気をつけてね、ヒカル落とすのなんてチョロイから」
そう言われて、輝は軽く苦笑いをして答えた。

じゃあ、と手を軽く振って、エミはそのまま立ち去ろうとして、あぁと振り返った。
「腕立て伏せ100回の仇はちゃんと打っておいたからね」

輝はそのまましばらく、彼女の去って行った方を見ていたが、もう一度目を閉じて、夜空を飛ぶ人になった。

夜間訓練の前に、担当教官が正式に交代になった事を知らされた。
新しい教官は、熱血タイプでうっとおしそうに見えたが、目に気合を入れて敬礼し、今度こそ本当に、星空と夜景の間に飛び立った。





・・ここまでお付き合いくださって、ありがとうございました。ほんとありがとうございます。
なんか、オリキャラいっぱい出してる作家さん達を尊敬しちゃいます。すごいなぁ・・。
まっすぐで素直すぎるのに鈍感な輝は、周りの人をいつのまにか変えてしまう・・的にしたかったのですがぁ・・。説明を入れすぎるのもクドイし~・・難しいっす。

この先のお話も妄想中なんで、またいずれ書くとは思うのですが、ひとますお休み・・。

で今、超純愛小説にはまってしまい、小説を読んでも最後まで読んだ例がないワタシが、久しぶりに完読しようとしています。
それ読んでるとヒカミサでそれをやりたくなってきたんです、はい・・。

またよろしければ、お付き合いくださいね。


スポンサーサイト

2011-09-16 : SS ファイターパイロット : コメント : 4 :
コメントの投稿
非公開コメント

Re: No title
びえりさん
エミのことを、気に入って頂けたとは・・嬉しいです
母親を知らない輝は、強い女性に魅かれるだろうな・・と、思った時に生まれたキャラなんです
だらしないようで一途、不真面目なようで一生懸命・・ってつもりで書きました

地球攻撃前の話が好き・・なんですが、エミは生き残ったかな・・とか考えたりしてます

いやぜひとも!びえりワールドでよみがえらせてくださいよ!
2015-07-23 22:40 : michy URL : 編集
No title
このお話が凄い好きで、こないだエミネムの8mile見ていたら思い出してしまいました。
エミさんのイメージがめっちゃ膨らみます。
いつか私にエミさん書かせて頂けませんか?ファンになってしまいました。
2015-07-23 21:49 : びえり  URL : 編集
Re: No title
んまーありがとうございます

これを書いていた時、オリキャラって難しいなーって思った記憶があります。
輝と未沙・・なんかは、頭の中で映像化されてるのに、オリキャラは読み手は想像するしかない
となると、オリキャラをいっぱい出すと読み手が混乱するかな・・思い入れたっぷりのオリキャラだと読み手が「引く」かな・・と、思って
でも、サラッと書けばいいだけかも。びえりさんみたいに。拍手です。
2015-07-14 21:18 : michy URL : 編集
No title
凄く素敵なお話でした。

とってもとっても素敵でした。

読んでて途中胸が熱くなりました…
2015-07-13 22:36 : びえり  URL : 編集
« next  ホーム  prev »

プロフィール

michy

Author:michy
記事へのコメントは、予告なく削除する場合があります。また、記事と関係のないコメントにはお返事しないか削除する場合があります。