ファイターパイロット 5

その5、です。
愛おぼ設定、輝はもともと軍人につき、訓練生時代があったかも妄想。
柿崎が出てきますが、テレビ版と違う設定にしちゃいました。愛おぼ版では、同期っぽいし、身体もでかいため、ちょっと先輩にしました・・。

ゆばさんが紹介してくださったおかげで、カウンターが・・すごい事に・・。
ありがとうございます。初めておこしの方は、カテゴリのファイターパイロット 1 からお入り頂ければと思います。

男ばっか妄想、よろしければお付き合いくださいませ(*^_^*)





北米の砂漠の中にある空軍基地を見降ろす空は暗く感じるほど青かったが、それに対峙する地上は、春だというのに砂漠と熱く煮えたアスファルトといった有様で、乾ききった上に赤く、そして鈍く光るように見えていた。

基地の滑走路が見渡せる宿舎の暑い屋上で、一条輝は目の前に広がる乾いた風景を見ながら大きくため息をついた。
飛行場という場所は例外なく広々として気持ちが良いものだか、ここには潤いといったものがない。見渡す限りの砂漠で、建物と言えば基地にある施設だけだ。

基地の周辺には必ず「ラブホがある」の法則を確信していた輝は、この基地にはその法則が当てはまらない・・と、(どうでもいいが)そう感じた。
基地周辺でジョギングをしていたら時々あるアクシデント。ラブホから出てきた車の助手席の女の人と「目が合う」といった、バツの悪い経験を、なんだか懐かしく思い出してしまう。


あの必死のサバイバル訓練が終わり、射撃訓練をひと通りこなし、無事この砂漠に立つ空軍基地に帰ってきた。ようやくVF-1への機種転換課程が始まるのだ。

VF-1の課程が始まる前に教官から「熟読しておくように」と手渡されたのは、電話帳3冊分はあるかと思われる、VF-1の運用マニュアルであった。アマチュアパイロットだった経験もある輝にとっては、機体の運用マニュアルは馴染みのあるものだったが、 この厚さは未経験だ。データでは活用しにくいだろうからと、わざわざプリントアウトしてくれたのだが、これを見ていると気が滅入るというものだ。

一緒に訓練を受ける柿崎は、他の訓練生と一緒に、かの高名なカジノの街に遊びに行ってしまった。
当然輝も誘われた。しかし、輝より2期先輩にあたり既に実戦部隊で訓練を受けていた柿崎と、ウイングマークを取ったばかりで、練習機からの機種転換となる自分は同じように遊んでいては、ついていけない・・。そう思って、宿舎に残り、マニュアルを読んで予習する事にしたのだ。

しかし、この集中力の無さは・・。当然マニュアルは半分も読めていない。こんな事なら柿崎達と遊びに行けば良かった・・。
輝は日差しで熱くなった手すりに両腕と顎を置いた。ぼんやりと辺りを眺めた。

ハンガー前のエプロンには、VF-1が整然と並んでいる。
「あれに乗るのか・・」
並んでいる複座式のVF-1は、アスファルトが焼けた熱で曲げられた空気のせいで、ゆらゆらと歪んで見えた。

・・どう見ても・・
「・・ペンギンみたいだ・・」

VF-1バルキリー。羽根を休めるその機体の胴体はずんぐりとしているし、ちょこんと伸ばした主翼は短いペンギンの羽根で、コクピットから先は口ばしに見えてしまう。ペンギンが寝転んだら、あんな風に・・。

「だめだ・・、こんな事では・・」

輝はそうつぶやいて、踵を返してそのペンギンに会いに行く事にした。

エプロンで並んでいるVF-1は、輝達より前の期にあたるメンバーが、セカンドと呼ばれる午後からの訓練に備えて準備されているものだった。
近くで見ると、それまで日本で乗っていた練習用ジェット戦闘機よりは大きいが、今までの主力戦闘機より、かなり小さい。

しかし、その微妙な大きさよりも、なにかこの機体からは漂ってくる強烈なものがある。
「すごい迫力だ・・」
どの戦闘機からも、基本的に兵器である事からくる迫力はあった。しかし、このVF-1から醸し出される迫力は、なにか違う。

「変形して、宇宙でも飛べる・・、なんか雲を掴むみたいな話だ・・」
そして、この機体は異星人に銃口を向ける事になるのかもしれない。引金を引くのは自分だ。

信念あって軍隊に入った訳ではない。パイロットになるための飛行過程にも、当然信念のある立派なヤツもいたが、彼らは次々と脱落し、なんの信念もなく、「親の借金の返済、事業用の資格が欲しかった、軍隊は飯がタダだから」という理由で入隊した自分が残った。
それなのに、こんな機密に近い部分にいると言うのはおかしな事だと、輝は思った。

アスファルトからの熱のせいでで、輝の首筋に次々と汗が流れ出る。汗で濡れた顔でVF-1を見上げた。腰に手を当て、胸を広げて息を吸った。暑いが、湿度は低く乾いているのが吸い込んだ空気の感触で解る。

ふと、飛行過程から去らなければならなかった同期達を思い出した。彼らは好きで去った訳ではない。除去されたのだ。適性が無い人間には、いくら飛行機が好きでも空を飛ぶ資格は無い。だから除去される。

しかし、自分は好んでここにいるかと言えば、それもよく解らない。ただ、適性があっただけの話のような気がする。適性があったから勧められ、流されて、今があるのか。
でも、この先の人生は、流されずに自分で決められる・・?

例えば、生涯を共にするような女の人を、自分で探して選んで、決める事。流されずに決める事が、出来るのだろうか。

乾いた熱風がVF-1がある方向から吹き込んできで、輝はもの想いから現実に戻った。
相変わらずの迫力のVF-1は、感傷や甘さを受け付ける隙間は無い。
なぜか、VF-1から父の声が聞こえたような気がした。
「解らなくなったら、目の前の事を淡々とやれ」
父がいつか語った言葉だった。

「さてと・・続き読むか・・」
もう、やるしかない。実機訓練までに除去されるのだけは、絶対にごめんだ。

額から流れた汗が目に入る直前に手で拭い、輝は宿舎に帰るべく歩きだした。

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2011-07-26 : SS ファイターパイロット : コメント : 4 :
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Re: No title
ドボガン?ドカベンじゃなくて?
2015-10-16 15:57 : michy URL : 編集
No title
本文の『 ペンギンが寝転んだら、あんな風に 』
その態勢は、ドボガンです 氷上を速く(ペンギン達は思ってる様です) 楽に(体力温存) 効率よく進む為んだけどね
ポンポン(腹冷え)冷えるんで、長時間はしないんだってw
正しく 輝の本に対する集中力と 同じです‼

2015-10-15 00:34 : 敦賀屋 バボ URL : 編集
Re: No title
びえりさん
どんな記事に下さったコメントかと思ったら、これだったので驚きました
あれぇ・・そんなに褒めてくださいってありがとう
ワタクシもびえりさんみたいなハードなお話が書きたいですよ・・
2015-07-14 21:10 : michy URL : 編集
No title
凄く思いというか、心情が伝わって来ます。
michyさんの書かれるお話って、気持ちの感じ方が凄く丁寧に描かれてますよね。
自分が本人になったつもりで読んでも違和感が無いので情景が綺麗です、物凄く。
なんていうか、私も本当は美しい話を書きたいな〜。
2015-07-13 21:19 : びえり  URL : 編集
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