SS ファイターパイロット 4

このSSシリーズに拍手くださってる方々、読んでくださった方々、ホントにありがとうございます(*^_^*)
結構楽しんで書いてますが、飛行機でてこないとやっぱりテンションさがります。

愛おぼ設定使用、完全オリジナル妄想。

寄り道しながらボチボチ書いていくつもりですぅ。
もしよろしければ、お付き合いくださいませ。



満月に近い周期のせいか夜空は明るく、まるで昼間の木漏れ日のように月の光が差し込んでいた。今日一日歩き通した一条輝と柿崎速雄は、湯を沸かそうと携帯用バーナーの火を点けた。

行動食をとっくに食べてしまった柿崎は、その場に寝転んで大きな声で言った。
「あーあ、なんでこんな事になるんだよ、俺もう帰ろっかな!」
「帰れるもんなら帰ってみろよ、こんな山の中からどやって帰るんだよ。もう行くしかないって」
輝は座ったままバーナーの炎のゆらぎをじっと見つめていたが、ふと思い出したように顔を上げワクワクするような顔で言った。

「なぁ、結構食べられる野草ってあるもんだな、これ食べてみようぜ」
「いつの間に集めたんだよ?俺はグルメだからそうそう満足できないぜ」
「お前が行動食を食ってる時に採ってたんだよ。行動食は節約しないとだめだから待ってろって言ったろ?」
「俺はお前みたいに草食系男子じゃないんだよ」
「後で食いたいって言ってもやらないからな」

大量に見えた野草も湯通しすると一握りになってしまった。それでも携帯できるよう乾燥させた味付き鶏肉のミンチの入ったアルミパックに、湯と一緒に野草を入れて食べられるようにすると、なかなかいい臭いがして食欲をそそった。

臭いにつられて柿崎が四つん這いで勢いをつけて迫ってくるので、輝は背中を向けて野草鶏肉ミンチを大急ぎで口に入れた。
「それよこせ!」
「やらないって言っただろ!それに、お前さっき食べてたじゃないか。」
輝も意地になって背中を向けて避けてやった。
「ケチだな!よこせ草食!」
「うるさいよ!」

アルミパックの汁を最後の一滴まで飲みほした輝を見て、柿崎はうつ伏せになって唸った。
「畜生・・俺のような肉食系がこんな所で男と二人だなんて・・どうせなら彼女と一緒にキャンプでもしたかったぜ」
「同感だけど、お前彼女いるのかよ?」
「かつてな・・」
「じゃあ、今いないんだ!だったらダメじゃないか」
可笑しそうに輝は背中を丸めて肩で笑った。
「ケッ!笑うなよ。お前はそこそこイケメンだから彼女いるんだろ?」
そこそこは余分だと思いながらも、正直に言った。
「いないよ。いつ付き合うんだよ。資格とるのに、こんなに忙しいのに・・」

ガハハと大きく笑って柿崎はまた仰向けになった。
「じゃあ、さっさとバルキリーのドライバーになっちまおうぜ、俺達は飛んでなんぼだ」
「・・そうだな・・」

風があって、虫の襲来にも怯えなくていい。今晩は野営用のテントを立てずにそのまま寝袋で寝る事にした。
飛んでなんぼ・・。はやく、空に行きたかった。


サバイバルも4日目、5日目ともなると、さすがに疲れが出てきて初めのように、危険だが早く目的に着くコースを選択する事は困難になってきた。
おまけに、6日目の今日は、柿崎が嘔吐と下痢を繰り返して体力を消耗しているのが解る。不調の原因は、捕まえて食べた川魚が彼には合わなかったらしい。自称肉食系だが魚肉は苦手のようだ。
初めは「生焼け食べるからだ、いやしいなぁ」とからかっていたが、だんだんとそんな冗談が言えない状況になった。

「無理してダメになる事はないんだ。いざとなったらリタイアも考えよう」
座り込む柿崎の隣で、輝は自分でも意外なほど冷静だった。子供のころから縋りつく母親がいなかったせいか、先が見えているようで見えない感覚には慣れているのかもしれない。
「大丈夫さ・・。それに、このままリタイアしたらメンバーから除去されるかもしれん・・。俺さ、やっぱファイターでやっていきたいんだよな・・。F転なんて、絶対にいやだ」
F転。ファイターからの転落。
「・・解った。コースを考える。休んでろ」

輝は地図を広げて目的地までのコースを探った。
いざとなったら、柿崎を担いで進まなければならない。急峻な斜面を進むのは危険だ。やや遠回りになるが、アップダウンのすくない緩やか山の斜面を通ってそこで野営し、翌朝、稜線に上って目的地まで下る。下りはやや急ではあるが、短い距離だからなんとかなる。

もう、何のためにこんな訓練があるのかなど、カケラも思い浮かばない。進むだけだ。

「歩ける」と言う柿崎の荷物を背負って、なんとか野営地までたどり着き、翌朝になった。柿崎の顔色は冴えないままだったが、昨日より症状は軽くなったようだ。
二人は稜線までたどり着いたものの、柿崎の身体からはまったく活力が感じられなかった。
斜面を下って行くのは、思った以上に力を使う。
「戦闘機乗りは空で死ぬもんだ。這ってでもいく・・」
軽口を叩かない彼に不安を感じた輝は決心した。

「俺にまかせろよ、っていうか、最後までしっかり歩いてくれよな。」
輝は柿崎の装備を右肩に担ぎ、左手で彼のベルトを背中側の腰の位置で掴んだ。
「ゆっくりでいいんだ。足を滑らさないように降りてくれ」
「・・すまん・・」
柿崎は素直に礼を言った。

それほど急な斜面ではかなったが、二人分の装備を背負い、柿崎を釣り上げて斜面を下るのは、思った以上に全身の筋肉を収縮させなければならなかった。
「ぐうぅ・・」
視野が狭くなっているのが解る。でも、もう少し、あと少し。

斜面を降り切った所で、森と藪がなくなり、一気に明るくなった。目的地は目の前にあった。
柿崎をひっぱりながら進む。頭が真っ白になった時、二人は目的地に到着し、訓練が終わった事を教官から告げられた。

先に到着していた訓練生達は、メンバーの中では小柄な輝が大きな柿崎を引っ張り、なおかつ彼の装備まで背負ってきた事に、驚きを隠さなかった。
ざわつく彼らに親指を立てて笑って見せた。

装備も帽子も(柿崎も)放り投げて、地面に大の字になって寝転んで激しく息を突いた。全身を汗がべったりと覆い、速乾性のある高機能のシャツをずぶずぶに濡らしていた。
放り投げられた柿崎は息も絶え絶えに言った。
「なぁ、輝・・、お前・・俺の主催する・・合コンに・・来ていいぜ・・」
噴き出すように笑ってから答えた。
「期待しないで・・待ってるよ・・」

汗で濡れた頬を乾いた風がなぞる。見上げる空はどこまでも青い。
・・この歩いた地形を空から見たら、ほんの小さな場所なんだろうな・・
地べたに這いつくばって息を突く輝の心は、大きな空にあった。


この日の夜。訓練生は集められ、それまで伝えられていなかった事を聞いた。
VF-1のあの航空機としては不自然な形態の意味。変形して、ファイター、ガウォーク、バトロイド、3つの形態となる事。

そして、彼らバルキリー隊の仮想敵。
それは解体された軍事国家から持ち出された反応弾を持つゲリラでもなく、統一された世界の中でなお、領土欲をむき出しの某アジアの大国でもない。

バルキリー隊の仮想敵は、巨大な身体を持つ、異星人。

彼らともし、白兵戦になった時、歩兵としてバルキリー隊は戦うかもしれない。その為に歩兵の基本である行軍を、自身の身体で経験する必要があった。そしてさらに、標的をみたら銃口を向ける訓練も行わなければならないという。

青い空に、白いスモークをたいて駆けるジェット戦闘機。その美しい光景が一瞬頭をよぎったが、輝はもう、何も考える事ができなかった。



つづく

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2011-07-04 : SS ファイターパイロット : コメント : 6 :
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Re: No title
あっ、オリジンでもそんなシーンありましたね(#^.^#)

元ネタは、同職種の自衛官の友人が「忘れられない経験」として語っていた事と、その内容とほぼ同じだった新人自衛官君の訓練の番組からなんです(^^)

マクロス乗船前・・のほうが妄想しやすいのです。。。
2016-08-19 22:12 : michy URL : 編集
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2016-08-16 22:51 : : 編集
Re: サバイブ
そうなんですか。では、ワタシの妄想もそれほど外してなかったですね。
陸自出身の友人達は、人生でインパクトのあった経験って言うと、必ずその事を言うんですよね。
外から見てる分には、そんな必死な経験があった事と、人生を共有するほどの友人が出来る事は、ちょっと羨ましい気がしますね。
2011-07-08 20:14 : michy URL : 編集
サバイブ
エアー マリンコ グリーン
やりますですハイ新人訓練で 装備40kgで アサルト担いで一週間
携行食は4日分 後は自給自足して
ただね、この訓練はチームメイトと死線を共にするんで
連帯感などを養うと同時に、結束力を高めたりで 退役後も 堅い硬い固い がね
各国の仕様で様々ですが ハッキリ言ってキツイですだよ(>人<;)
柿崎君の様に ヤっちゃった子って以外と居ます
こんな子が居る小隊って・・・・楽しいですがね、大変だすど(o^^o)
2011-07-07 22:59 : 敦賀屋バボ URL : 編集
Re: カッチョいい!
にゃおさん、コメントありがとうございます。

サバイバルって言うか・・アウトドアっていうか・・。この辺、知識ないもんで・・(^_^;)陸自出身の友人が何人かいるんですが、やっぱりサバイバルするみたいです。けど、みんなどんな内容だったか喋らないんですよね~。秘密らしいです。でも、この時に一緒の班だった人とは一生友達なんだって。

ちなみに町内会長さんの関西弁は、船場あたりの旦那衆ってとこでしょうか。
2011-07-05 21:12 : michy URL : 編集
カッチョいい!
うーん。男のじゃれ合いカワイイ・オモシロイ。
鯖威張る ― サバイバルがリアルな気がする。輝のサバイバル食たべたい~。
彼はTV/映画とも、こういう状況に前向きでしたよね。ここまで頼りになって格好よくは描かれていませんでしたが…。

KAKIZAKIってば、軽口がいかにも彼らしい。ついでに大口の顛末も彼らしい。

飛行機野郎達の想いや、やり取りがリアルでいいですね~。

本日の格言
「ケチだな!よこせ草食!」 「俺達は飛んでなんぼだ」
次点「お前はそこそこイケメンだから」

資料を教えて頂き、ありがとうございます。
そっかー。グラフティ―かー。購入迷ったんですよねぇ。

勝手に関西の方と思い込み、失礼いたしました。
町会長の発音は正しいらしいのが分かり、嬉しいです。
2011-07-04 23:28 : にゃお URL : 編集
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